「優しいでしょう下心があるものは」海賊(赤→青)
いつもに増してやる気が出ずに、クザンは机に広がる書類を見ながら頬杖をついて呆ける。昨日は前から想っていた女性と食事を出来るはずだった。呼び出しさえ無ければ。多少の己の部下が対処できる事であればそのまま、のらりくらりとはぐらかしたのだが呼び出しに来たのは同僚であり同じ大将の名を冠する"赤犬"サカズキ。こいつが呼びに来ると言う事は余程の事態、もしくは危機迫った状況では無いがお偉い方との退屈な接待のどちらかである。どちらにしたって頭に糞が2つ位つくと言ってもよい真面目な男がクザンの怠慢を逃すはずがない。漸く漕ぎ着けた久々の食事だったのに泣く泣く断りと謝罪を入れたら埋め合わせをさせて貰える機会すら与えられず振られてしまった。最後に苦笑いをしながら「他にお似合いな人がいそうだわ」と、黒い髪を靡かせて。忙しい中でも小まめに連絡をして本当に久々に身を入れた分だけダメージがデカい。下らない貴族に邪魔された分だけ腹立たしさも。もう幾度目かの深い溜息を吐き出したと同時にクザンの執務室扉が開かれ、あの日駄々を捏ねるクザンを引き摺り仕事へ連れ戻した糞糞真面目男が書類片手に入ってきた。
「クザン、わりゃ先日の報告書じゃが…なんじゃその腑抜けたんわ。」
「うるせぇな。仕事はしてるでしょ。」
これ以上触れられたく無くて仕事の話を促すがサカズキは少しの間を空けて机の上に持ってきた書類を置いた。其れを横目に見ながらボケっとしていたら少し乱暴に頭を撫でられた。え?何が起こった?脳味噌が処理しきれなくてサカズキの顔を座ったまま見上げれば見た事も無い優しい顔をしていた。普段厳格かつ険しい表情の為気付かなかったが緩められた分整った顔立ちと余計に柔らかな表情に見えた。クザンは気付いた瞬間腹の底から意味不明な恥ずかしさを感じた。じわじわと顔もなんだか熱いと思っていれば頭を撫でていた手がゆるりと頬に添えられて覆いかぶさるようにサカズキが体を屈める。かさついた唇がクザンの唇に押しつけられ、甘く食まれる。余りのことに舌が這ってくるまで固まってしまったが湿った感触に肩が跳ねて必然的に距離が空いた。
「ここにサイン書いて修正しときんさい。」
そう言って部屋を後にするサカズキに何も問えず、扉が閉まった音と共にクザンは机に突っ伏した。忙しない心臓が信じられなくて顔を覆った。
「クザン、わりゃ先日の報告書じゃが…なんじゃその腑抜けたんわ。」
「うるせぇな。仕事はしてるでしょ。」
これ以上触れられたく無くて仕事の話を促すがサカズキは少しの間を空けて机の上に持ってきた書類を置いた。其れを横目に見ながらボケっとしていたら少し乱暴に頭を撫でられた。え?何が起こった?脳味噌が処理しきれなくてサカズキの顔を座ったまま見上げれば見た事も無い優しい顔をしていた。普段厳格かつ険しい表情の為気付かなかったが緩められた分整った顔立ちと余計に柔らかな表情に見えた。クザンは気付いた瞬間腹の底から意味不明な恥ずかしさを感じた。じわじわと顔もなんだか熱いと思っていれば頭を撫でていた手がゆるりと頬に添えられて覆いかぶさるようにサカズキが体を屈める。かさついた唇がクザンの唇に押しつけられ、甘く食まれる。余りのことに舌が這ってくるまで固まってしまったが湿った感触に肩が跳ねて必然的に距離が空いた。
「ここにサイン書いて修正しときんさい。」
そう言って部屋を後にするサカズキに何も問えず、扉が閉まった音と共にクザンは机に突っ伏した。忙しない心臓が信じられなくて顔を覆った。
2022/09/23