『映るわたしはあなたを写す』
俺に無いものをお前は持っていて、 俺が持っているものはお前に無い。
それなのにお前は自分を「俺」だと言った。
嫌になるくらいの笑顔で。
俺に無いものを持っていて、
俺に有るものを持っていない、俺。
お前は確かに俺だったけど。 どうやったって俺に成れはしない「俺」だった。 俺がお前に成れないのと 同じように。
「曖昧な立ち位置だよな」
同じ声で、似ても似つかない表情で。 そう言ったお前をあらわす名すら、
あったとして それは「俺」の名なのだから。
ブレスレットを指でなぞる。 ちゃり、と鳴ったそれが、
「あんまり悩んだっていいことないって言ったろ」
そう、笑っているような気がしてならなかった。
結局なにも渡してやれないけど奪いたくもなかったし できることならいっしょにいたかったわがままさんのお話。
きっと今後ずっと 「あいつなら」 って思考をするようになるんだろうな。
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