「とにかく巨人をぶっ殺したいです」
ギラギラと鈍く輝く瞳でそう答えた子供に、悪くない、とリヴァイが呟く。
そんな様子を離れた位置から眺めながら、ナナシは静かに瞼を下ろした。
***
「…珍しいな。まさか気に入ったのか、リヴァイ」
「悪くないと言っただけだ」
それが珍しいと言っている。
足早に廊下を歩きながら、隣で酷く鬱陶しげに眉を寄せるリヴァイにそう告げる。
あの子供はイレギュラーな存在だ。
憎悪の理由は知らないが、巨人になれる事といい、子供らしからぬあの瞳といい、これから一波乱も二波乱も起こりそうである。
「そういうお前はどうなんだ」
チラリ、と見上げられ、ナナシは暫くの間考え込んだ。
エレン・イェーガー。
どうだと聞かれれば…どうなんだろうか。
「俺は別に…。敵でないなら、それでいい」
「はッ、どうでもいいって事か。相変わらずだな」
「今更だ。お前達の好きにすればいいさ」
「お前の班に入れる事になるかもしれねーぞ、ナナシよ」
からかうように、そんな事を言われる。
それは確かに面倒そうだ。
何が起こるか分かったものではない。
だが…それこそ今更な話だ。
壁の外に一度出れば、いつだって計算通りには事は進まない。
「エルヴィンがそう決めたのなら、従うだけだ」
やはりそれが答えだった。
今回はどうせ、面倒を引き受ける事になるのはリヴァイの方だ。
納得したのか何なのか、正面に向き直ったリヴァイはつまらなそうにふん、と息を吐き出した。
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