大体こんな人々1


部長(闘牙・珠佳)

「新宮殿」

昼休みの半ば、早弁したものも含めて本日15つ目になるパンを頬張っていたら気配もなく真貝が現れた。お前バスケ部より忍者部とか作ってそこ所属した方が似合うぜ、と思った事をパンと一緒に飲み込む。口の中が寂しくなったのですぐに次の一口を入れた。

「食事中にすまない。今度の練習試合に向けてのメニューを決めておきたいのだが」
「ふぉんふぁほぉふふぁほはふぉ」
「新宮殿、すまないが何を言っているか理解出来ん」

眉一つ動かさない表情で淡々と言う。きっとここに志都がいれは「キャプテン実は機械なんちゃうん!」とつっこむ姿が目に浮かんだ。まーあ確かに機械みたいだ。俺が食べ終えるのを待つのに、ふらりと揺れもしない。やっぱり忍者部のが似合うだろ。喋り方も忍者みてーだし。真貝は俺が15つ目のパンを全て飲み込んだのを確認すると口を開いた。

「……ふむ。新宮殿、あと幾つ食す気だ?」
「あー…部活までには10個は食いてーなぁ」
「ほう、ならばメニューはこちらが決めていいか?」
「は?」

おーい、しんかーい。文脈がならばに繋がってねーぞー。一体俺の食べる量とメニューがどう繋がってんだよー。つっこみたかったが、先に真貝が切り出してきた。しかもかなり関係していたらしい。

「いやな、最近常々思っていたのだよ。この男が食事が嫌になる程の練習をしてみたいと」
「…ほー?つまり、それを考えてくれると?」
「ああ。勝負をしよう新宮殿。私のメニューが勝つか、新宮殿の体力が勝つか」
「いーねぇ。部活するにもそのくらいの張り合いがなくっちゃな」
「では決定だな。失礼する」

真貝は体を反転させ、脇目も振らずに教室から出ていった。最後に見えた表情はどこかしら楽しそうだったのを伺うと、あいつも結構な鬼畜だ。
密閉された袋に手をつけ、そこからまたパンを取り出し口に含む。さて、こっちは真貝のメニューより男子部員を早く来させて、別のウォーミングアップメニューを考えなきゃな。部員達の青ざめた顔が浮かんで思わず笑みが溢れた。


後日
勝敗結果:新宮闘牙の勝利
補足:紅石ルイ、端博虹助、紫水晶、志都霖の4名が倒れる

(鐘ヶ崎バスケ部は鬼畜×2)



高校三年(大斗・ルイ・太陽)

鬱陶しい。ああ、もう鬱陶しい。俺の後ろをちまちまちまちまと着いてくる、この馬鹿二人。真後ろに居るルイからは気弱な空気があってイラつく。その後ろの太陽は何が楽しいのかにやついている表情で更にイラつく。もう限界だ。足を止めて真後ろにいたルイの頭を勢いよく掴んだ。

「だぁっ!!テメェ等何がしてぇんだよ!!いい加減にしねぇとぶっ飛ばすぞ!あ゛あ!?」
「………っ」

ルイの体が強張り、じわりと前髪に隠れ気味の目尻に涙が浮かんできた。それがイラつきに拍車を掛けるんだっつーの!何回言えば分かるんだこの無口は!!その意を込めて「一々泣くな!!」と怒鳴った。泣くのを堪える様子は見えたが、ルイの横に移動していた馬鹿のにやついた顔も見え、それが気にくわねぇから一発蹴りを入れておく。

「いっでぇ!なんだよ大斗ー!暴力反対っ」
「うぜぇのが悪ぃんだよ!ルイも何がしてぇかさっさと言え、このまま脳天潰すぞ!!」
「やめたげてよお!!オレスプラッタきらい!」
「いっそのことテメェをスプラッタにするぞ太陽…!」

寧ろスプラッタになれよその方が世のためだ、こんな馬鹿がいても意味ねぇだろ。本当に何をしに来たか一切分からない。未だ頭を掴まれているのに抵抗を見せないルイを太陽が小突く。それにようやく行動を始め、ズボンのポケットを漁り出すルイ。何か知らねぇがのったのたおせぇよ。このまま遠くに投げてやろうか。そっちの方が絶対気が清々する。いつも通りといえばいつも通りの黒い気持ちを募らせていたら、ツンとした匂いが鼻についた。

「んだよ、湿布なんざ出して」
「…だ、大斗………怪我…、してる……から…」
「部活に響くし、渡そうとしたんだけどルイが中々タイミング掴めなかったんだよなー」
「まず怪我なんざして、ね゛っっ!」

先程の仕返しもこもってか、思いっきり太陽が足首を蹴ってきた。しかも、今朝運悪く捻ったところを的確に狙って。思わずルイから手を離してしゃがみ込む。ほーらやっぱり、と自信ありげな声が頭上から聞こえた。後で顔面にバスケボールぶつけてやる覚えてろ。

「チ…ッ、おらルイ。さっさと渡せ」
「……え、…あ…」
「だあ!!渡せっつってんのが聞こえねぇのかノロマ!!」
「大斗が素直に受け取る、…だと……!?こ、これはまさかっ、大斗はオレ達の知らない時間を別世界で過ごして成長して帰ってきたということか……!?」
「黙れ喉潰すぞ中学生頭」

ルイから湿布を無理矢理奪い取り、適当に痛みがありそうなところへ貼る。別に剥がれても構いはしねぇから固定もさせずに立ち上がった。見下ろせば湿布を持っていた手の状態のまま目を白黒させて固まっている馬鹿と、まだわけわからねぇ推測をぶつぶつと呟いてる中学生脳がいた。思わずため息が漏れる。

「いつまでもちまちまと着いて来られるのが鬱陶しかっただけだ」
「おお、解明だルイ!!大斗は不良ツンデレ!」
「……つ…?」
「なんかごめん」
「俺に謝れ」

変な称号をつけるな。気持ち悪い。とにかく太陽の頭に一発入れておく。そしてさっさとその場を去ろうとしたが、ぶーたれた太陽が付きまとってくるし取り残されないようにルイも着いてきた。
ああ、くそ鬱陶しい。結局変わらねぇならこんな臭ぇもん足に貼るんじゃなかった。


(基本騒がしい)


2(一年・二年編)に続く

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