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ふわふわするような、地面に足が付いてないような、そんな毎日。
そんな日常でもなんとなーく楽しいし、このままおばあちゃんになるまでそんななんとなくで生きて、そことなく幸せになって終わる人生なんだろうなーって思っちゃう最近。

あ、そんなこと考えてたらまた塩と砂糖間違えちゃった。

目の前でぐつぐつ沸騰してたお湯か水かの中間の物を見つめてうーんと唸る。

……ちょっと甘くなるぐらいだし大丈夫だよね?

「…お姉ちゃん、お塩とお砂糖間違えたの?」
「んー?あはは、ばれちゃった?」
「み、みゆがご飯作る、から…お姉ちゃんはお出かけの準備してて…?」
「ほんと?ありがとーみゆ!火傷とかしないようにねー」

みゆは本当しっかりしてるなぁ。せり助かっちゃう。
おどおどした手つきで朝ご飯作ってる様子は不安だけど、まあいつも大丈夫だし心配ないよね多分!

鼻歌を歌いながらエプロンを外して、自室に向かおうとしたら、笑顔で姉のかながこっちに向かってきた。

「あ!せりみてみて〜、新作できた…きゃっ!?」
「あららー」

スリッパを履いていたのに、何に躓いたのか目の前で盛大に正面から転んだ姉。もう、ドジッ子なのは一体誰に似たんだろうなぁ。あ、お母さんか。
体は完全に床とこんにちはしてるけど、自分が作った服だけは死守してる辺りプロ精神はすごいなぁ。

「大丈夫、かな?」
「えへへ…大丈夫だよ。それよりね、みゆに新しい服作ったんだけどどうかな?」

ぶつけた鼻の先を赤くしながら、せりに小学生サイズの服を渡してきた。
わあ、ふりふりワンピースだぁ。もうかなの好みがすっごく分かるぐらいふっりふりだぁ。

前見て後ろ見て、横見てちょっと縫い目引っ張ったりして、とりあえずそれっぽい感じでかなの服をみる。

「うーん、みゆはもう少しフリルない方が似合うんじゃない?」
「そっかぁ…。わかった、ありがとうせり!もうちょっと訂正してくる〜」
「おっけー。ご飯もうちょっとしたら出来るからねー」
「はーい!」

ぱたぱたと自室に戻っていったかなを見送って、さてせりも準備しようっと。





「「「ごちそうさまでした」」」

ぽんっと3人同時に両手をあわせて、軽くお辞儀をする。
よし、ちゃっちゃと片付けて有紀の家よって七瀬起こして、椿の家にいこうかなー。ちょっと早くなってもまあ椿だしいいや。

お茶碗を下げて食器を洗っていたら、耳に入ってきたのは知らない女の人が淡々と話している声。

『―――また、この謎の黒い空間への現在の対策としては…』

「もう、最近はこのニュースばっかり…」
「学校でも、気をつけるようにって先生言ってたよ…。怖いなぁ…」
「あはは、大丈夫だよみゆ。強くて偉いおじさん達がどうにかしてくれるってー」

ニュースだけで半泣きになっているみゆ。せりが声をかけても不安そうにこっちみてて、頭とか撫でてあげたいけどちょっと遠いなぁ。
と、思ってたら、かながなだめてた。よかった。

でも、みんな怖がりすぎだよなぁ。こんなのどっかの国が戦争してるのと同じようなぐらいの感覚でしかないや。
それに、近づいたら危ないとか、気絶するとか、何で嘘付いてるんだろう。近づいたら駄目な問題でもあるのかなぁ。
うわぁ、有紀が好きそうな感じ。今日会ったらまた世界を救うのは云々とか楽しそーに話しだすんだろうなぁ。今日はどういう風に乗っかろうかな。

「でも、本当に怖いよ…。クラスの男の子、先生が駄目って言ってたのに黒いの見つけて近づいたら、倒れちゃったんだよ…?」
「本当?それは怖いね…。せりもみゆも気をつけてね?」
「………え?」
「え?せり、もしかして有紀ちゃんとかと近づこうって言ってたりするの…!?」
「だ、駄目だよお姉ちゃん!危ないよ!!」
「あはは、しないしない。ちょっと聞こえなかったから聞き返しただけだってー」

泡が付いたゴム手袋のままで、手をひらひらと揺らして笑えば「よかったー」と安心した声を出す2人。

……………えーっと、せり、この前立ち入り禁止にされてないところで黒いの見つけちゃって、ニュースで言ってるの嘘か本当か気になったから手を黒いところにつっこんでみたけど、何もなかったんだけど………。あれ?

カチャカチャと食器同士が当たる音と、ニュースでは新しく出来た黒い空間のせいで立ち入り禁止になってしまい、畑が無くなったとかの被害の話しとか外国のお偉いさんが出てきてどうのこうのとか、まだまだ続く黒い空間の話題。


さてさて、どうしてせりだけ大丈夫だったのかな?


…………まあ、言ったらめんどくさそーだし、なんとなく生きてきたい人生が狂っちゃいそうな気がするし、これはせりの心の中に留めておこーっと。
そんなこと気にしなくても、どうせいつか終わる話題だろうしなぁ。

それよりも、今日は何して遊ぼうって考える方が大事かな。


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