夜  




食事が終わり、皿洗いを手伝おうとしたが、それより承太郎くんに絵本を読んでやってほしいと頼まれた。ホリィお母さんは私と承太郎くんを仲良くさせる気満々らしい。
大人しく私もそれに従って承太郎くんを呼ぶとまるで尻尾を振りながら走ってくる犬のようにこちらへ向かってきた。
「呼んだ?お姉ちゃん!」
先程までウトウトとしながらテレビを眺めていたのに、睡魔をどこにやったのかもう目はギンギンである。
「今日は私が本を読もうか」
目線を合わせてよういうと目を輝かせ飛び跳ねる承太郎くん。
手を引かれて私はリビングを出ると広い広い廊下を承太郎くんと一緒に小走りで駆け、部屋に通される。そこは一人分の部屋とは思えないくらい大きな部屋に驚愕した。
ベットなんか3人は入る大きさだし机もこれまた高級なものだ、本棚もこれまた大きな図書館にでもあるような本棚。中身は全て子供向けの本だが、承太郎くんは本が好きなのだろうか
エアコンもあって空調設備も抜群、ふかふかのソファーにテレビもあるし小型の冷蔵庫に大きなタンスにもう言ったら切りがない
ここは高級ホテルかなんかだろうか。
「僕これ読みたい!」
こんなにはしゃいで本当に眠れるのかこの子は。
そんな思いを口には出さず大人しく絵本を受け取る。タイトルは『白雪姫』
大人なら誰もが知っているその絵本をふかふかのベットに寝転がる承太郎のそばに座り絵本を読み聞かせる。


…一幸せに暮らしましたとさ。」
「へへ、お姉ちゃんがお姫様で僕が王子様ー…」
寝ながらむにゃむにゃの寝言を呟く承太郎くん。まぁ確かに承太郎くんは成長すれば王子様になりそうだけど私はお姫様って柄じゃないなぁ…
承太郎くんに布団をかけなおして静かに部屋を出る、のはいいんだけども1つ問題なのが…。

「この家広すぎて…戻れない」
まさかの家の中で迷子。
とりあえずウロウロと歩き回るとホリィお母さんを発見する。まだ私は自分の部屋すら知らないのだ、聞かなければ。
「あの…」
「あら!名前ちゃんっ、承太郎のことありがとうね」
「い、いえ。そんな」
むしろこうやって頼み事をしてくれたほうが、私の存在意義があるようで非常に助かる。
「あのね、名前ちゃん。少しずつでもいいからね、私達に心を開いて家族になってね」
「い、いえ。家族になってもらったのはむしろ私のほうで…」
「ほら、またそうやって敬語を使うんだもの。…でもそれも徐々に慣れていけばいいわよね」
名前ちゃんの部屋はこっちよ、と通された部屋。承太郎くんには及ばないが、とても大きな部屋で、つい最近まで空き部屋だったことがわかる。
「ごめんなさいね、流石に家具は私の独断で買っちゃいけないってお父さんに言われて…」
ナイスです、ジョセフおじいさん。
流石に自分の部屋まであんな少女趣味は…ちょっと。
「お客様用の敷布団はあるから、今日はこれでお願い…
明日さっそく家具をそろえましょ!」
念入りに掃除をしたのかホコリが一切ないこの部屋に敷布団。一晩寝るには十分すぎる
「はい、明日もお世話になります…」
「当たり前よ、私はお母さんなんだから
おやすみ、名前。」
ちゅっとおでこにお休みのキスが送られ、
ホリィお母さんが目の前を去ったあとも暫らく硬直してしまった。
この外国感溢れる生活に慣れる日は来るのだろうか。


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