団欒  




承太郎くんに手を繋がれたまま家に帰ると、ホリィさんが出迎えてくれた。
「まぁ!どうしたの二人ともその汚れは!」
怒っている、という表情ではなく
ただ驚いた様子だった。この様子からするとこの子は本当にこうやって思い切り遊んだのは初めてなのかもしれない。
「すみません、ホリィ…お母さん。」
まだ慣れないその呼び名。
ホリィさん、と言いそうになったときに若干むすっとしたが、お母さんと付け加えた瞬間ニコリと微笑む。
「私がついはしゃいでしまって…承太郎くんを無茶させたかもしれません」
あくまで私の失態だ。
承太郎くんが怒られることは是非とも避けたい

「楽しかった…?」
承太郎くんの前でしゃがみこみ今日の感想をきくホリィお母さん。
「あのね!すっごーい楽しかった!」
「そっか!」
ならよし!といつみても明るいホリィお母さんは私に耳打ちをした。

「あのね、あの子があんな嬉しそうな顔をするなんて久しぶり。」
ありがとう、と私と目を合わせて微笑むホリィお母さん。
「あー!お母さんがお姉ちゃんと仲良くしてる!!お姉ちゃんの一番は僕!」
「残念ねー承太郎!名前ちゃんは私の娘でもあるんだからー!」
渡さんとばかりにぎゅっと私を抱きしめる承太郎くんに対抗してホリィお母さんも抱きしめてくる。その騒ぎを聞きつけてジョセフさんもやってくる
「残念!わしの孫でもあるんじゃーい!
孫はおじいちゃん大好きってのはお決まりのことなのよーん」
とまた私を抱きしめるジョセフさん。
四方八方から愛情が押し寄せてきて、また涙がでそうだった。苦しいが悪い気分ではなかった


「そうだわ!二人ともお風呂に入ってきて!」
3人の抱きしめ大会は、ホリィお母さんの言葉によって幕を閉じる。
二人ともということは私が承太郎くんを風呂に入れろということなのだろうか、
しかし承太郎くんは見た目小学生くらいだ、小学生なら一人でお風呂くらい入れるんじゃないのだろうか?というかいいのかな、血繋がってないのに…犯罪じゃないよな…。

「はいろうよ、お姉ちゃん…」
この上目遣い、将来小悪魔だなこいつは
承太郎くんが入ろうというならば問題はない、私だって小学校卒業まで母親と入っていたし…。
「うーん…じゃあ入ろうか。」
案内された風呂場に向かい、私は驚愕した
普通の家にこんな脱衣所もこんな大きな風呂場もないだろうに、全くなんでこんな一々何もかもが豪華なんだろう。風呂場にこんなスペース必要ないだろ、もう温泉じゃないか

承太郎くんは一足先に温泉…いや、風呂場に向う。私もそれに続き風呂場のタイルに足をつける

「お姉ちゃん!髪洗ってー」
「一人でできないの?」
「できるけど、やってもらいたいの!」
あぁ、なるほど。承太郎くんは兄妹に憧れていたというし、こういうことにも憧れているのだろう。承太郎くんの髪を美容師の真似をして「どこか痒いところありませんかー?」なんていいながら洗ってやると、とても楽しそうだ。
「お姉ちゃんって何歳なの?」
「今は13歳だよ」
「どこに住んでたの?」
「遠くの方だよ」
「なんで僕のお姉ちゃんになってくれたの?」
「逆だよ、承太郎くんが私の弟になってくれたんだよ」
湯船に浸かると、承太郎くんの質問大会が始まった。代わりに承太郎くんが9歳だということを聞き、好きな食べ物、嫌いな食べ物なんかを教えあった。

お風呂から上がるとなんとまぁファンシーなフリフリのピンクピンクな寝巻きが用意されていた。私が元々着ていた制服はもう洗濯機の仲だろうか。
「お姉ちゃんまだー?」
もう着替え終わった承太郎くんを待たせるわけにもいかないので仕方がなく目の前にある乙女寝巻きに腕を通す。承太郎くんは可愛いとかなんとか言ってくれたが恥ずかしさしかない。

「まぁ!似合ってるわ夕陽ちゃん!!」
「berrycute!!」
承太郎くんに連れられてリビング行くと既に料理の準備はされていて二人もそこにいた、
二人の絶賛の声も私の恥ずかしさを倍増するだけだった。
「あの……これ」
「気に入ってくれた!?私娘ができたら絶対こういう格好させようと思ってたのよ!」
半ば興奮気味なホリィお母さん。
じゃあ寝巻きだけではなくプライベートもこんな格好になってしまうのだろうか
こんな身で図々しいかもしれないがそれだけは絶対に阻止したい。
「あの…大変申し訳ありませんが、
こういうのは私の趣味ではないというか…
家から服とか持ってきたので着替えてきてもいいでしょうか…」
あの中から寝間着を出すのは少し大変だが致し方ない。
ホリィお母さんの雰囲気ならてっきり快くOKしてくれると思ったがホリィお母さんはガーンと肩を落とし承太郎くんと同じリアクションをとっている。
「……わかったわ。
でもたまにならこういう格好してくれる?」
渋々了解はしてくれたが諦めきれないようで、親子共々上目遣いで頼んでくる。
それに負けて「わかりました」と了解してしまった。この人の「たまに」の頻度がどのくらいなのか心配である。


「今日は色々ね、お家の掃除とか服とか買ってたから時間がなくてあまりいいお料理じゃないの」
ホリィお母さんはそう言うが、この食卓に並ぶ料理はどれも豪華でうちでは年に何回かしか食べられないようなものばかりだ。
「明日はちゃんと豪華なもの作るからね!」
楽しみにしてて、と意気込んでいるが
もうこの料理だけで十分です。というかこんな豪華な食事を毎日食べてるなんてこの人達何者なんだろう。そう言えばあまり詳しいことを聞いていなかった。


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