03  




次の日、諦め半分…いやほぼ諦めていたが
また、あの場所へ向かった
当然もういないだろうと思っていた。
だが俺の予想とは違い、彼女は昨日と同じようにあの太陽の中にいる
いつものようにキラキラした笑顔を振りまき、魚たちと歌を歌っていた。
だが神経を研ぎ澄ませていたようで、俺が来た瞬間にこちらに気づいたようだ
また、逃げられるんじゃあないかと思ったがそんなことはなく
ただ警戒していた。半分人間、といってもやはり半分は魚だ人間に対する警戒心が強い。

しばらくお互い見つめ合っていると、目の前の人魚は口をパクパクと動かす
何かを話しているようだが俺には通じない
「わからない」という意思を込めて首を振ると人魚はハッとした顔をして指で上を指した
そしてその方向に彼女は泳ぎ出す。
上に来い、ということなのだろう。
彼女の後を追う形で上へ上へと泳いでいくと海面へでた。


「…砂浜の方までいきましょうか、そこの岩陰がいいわ」
「お前人の言葉が話せるのか」
「ふふ、だって半分は人間だもの。話せるわ」

見つめるだけだったあの笑顔、ずっと俺のものになったらなと焦がれていた。
こんな近くで笑顔を見れる日がくるなんて、不覚にもにやついてしまいそうだ
それに人の言葉が話せるなら意思疎通も容易だ。どうにかして彼女を繋ぎ止めたい

「ふぅ…。喉で呼吸するのなんて久々
梅雨の時期でよかったわ、夏にこんなところでたら最悪よ」
「…そうか」

正直、俺は今まで人付き合いというものを怠ってきた。
というか、周りが勝手に寄ってくるから必要がなかった
こんなとき、どんなことを返せばいいのかわからない
こうなるんだったら本屋で人付き合いのマニュアルを読んでおけばよかったか。


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