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彼女の浮気疑惑


「んぅー…」

もうすぐ夏だというのに、梅雨の激しい雨のせいか空気は冷たく何だか肌寒い。一緒に寝ている土方さ…じゃなくて、トシさんの温もりを求めてモゾモゾとすり寄る。あぁ…暖かい。

……………あれ。

…なんかおかしい。トシさんは確か出張で屯所を空けているはずで。夢だっけ。…二週間も離ればなれになるなんて寂しすぎる!と泣きながら私も一緒に行く!と我儘を言って困らせたんじゃなかったっけ、あれ、これが夢だっけ。

…この隣の温もりは…、

―――スッ

「おう、今帰っ……は?」

「ト、シさん…?」

「んー‥何でィ土方さん…起床時間にしちゃァまだ早いでさァ…グーグー…」

「おおおお沖田隊長…?」

「って寝てるんじゃねェェ!!オイ、お前ら…どういうことだこれは。」

なんというカオスな状況なんだろう。早朝、私の部屋にトシさんと沖田隊長がいて、文字通り鬼のような形相の副長の前に正座をさせられている。

「ちゃんと説明しやがれ。俺が出張に行ってる間にどうやったらお前らが一緒に布団に入るような仲になんだよコラ」

「土方さんが出張で居ない隙をついて一発しけ込んだらこうなったんでさァ。ねみィ…」

「は…!?でででででたらめ言わないで下さいよ!」

トシさんが出張に発つ前に二週間分と言わんばかりに愛された以来私にはそんな行為に及んだ記憶は全くない。…はず。

「オイ、」

「嘘でさァ。いくら飢えてたとしても土方さんのお古なんか使いたくないんでねィ」

「(お古って…)」

「あんたがいなくて寂しいつって、自棄酒したこいつが酔っぱらったんで介抱してやってたらそのまま寝ちまった、それだけでさァ」

「…いくら総悟だろうと次はねェかんな」

「おーおー恐ろしいこって。じゃあ俺は二度寝でもしてきやすぜィ」

――――スッ…パタン

「トシさん…?」

「はぁ…」

「ご、ごめんなさい!」

「ったく…心臓に悪ィ。」

「…はい。反省してます」

「疲れて帰って来てんのに。」

「ごめんなさい」

「次やったら許さねェぞ、ってかそんなに寂しかったのか」

「…当たり前です」

「んな拗ねんなよ。…寝みィ」

「…お疲れ様です、私の布団をどうぞ、」

「あぁ。…って何してんだ。」

「え?せっかく早く起きたので市中見回りにでも行こうかと…」

「バカか、お前も一緒に寝るんだよ」

「でも仕事…」

「お前も休め、副長命令だ」

痛いくらいにギューっと抱きしめられて、首筋にでっかいキスマークを付けられた。鬼さん曰く、男避けだそうだ。

そんなことを言ったかと思えばすぐに寝息が聞こえた。鬼の副長の天使のような寝顔を見つめながら私も二度目の眠りについた。


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