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16

「だいぶ陽が長くなりましたねえ…」

「そうだなあ…」

「暢気なもんですよねえ…」

「そうだなあ…」

今私は局長と二人で縁側に腰掛けている。だいぶ春らしくなって、日差しも暖かい。もうすぐ予定日なのだが待望の赤ん坊はまだ出てきてくれそうにはない。あ、今蹴った。マジ?触っていい?いいですよー。お、近藤さん蹴られた。上司に蹴りを入れるなんて中々肝の据わった赤ちゃんですね。お前とトシの子供なら仕方ないだろ。…なんて暢気な会話を交わしている。といっても暢気なのは私達だけで、十四郎さんは心なしかソワソワしているし、沖田隊長も山崎も5分おきくらいに私の様子を見に来てはお腹を撫でて去っていく、といった具合で周りは結構慌ただしい。

「おい、」

「お!なんだトシも仲間に入れてほしいのか?」

「十四郎さんも一緒にお茶菓子どうです?」

「陣痛とかまだねェか?大丈夫か?あんま無理すんなよ?」

「大丈夫ですよ〜。心配症なパパですね〜」

「全くだな!ハッハッハッ」

「いつでも車出せるように手配はしてあるからな」

「まだ大丈夫ですよ」

「とりあえず、談笑は終了だ。近藤さんは部屋に戻って仕事してくれ。名前はさっさと風呂。」

「十四郎さんもいくの?」

「あぁ。早くしろ」

「はーい」

お腹が大きくなってからはこうして十四郎さんと一緒にお風呂に入ることも増えた。最初こそ恥ずかしかったものの、今となっては心地良い時間だ。

「腹パンパンだな、いつ出てくんだ」

「もうそろそろでしょうけどねぇー。ってあんまり触らないでくださいくすぐったい」

「いいだろ」

鬼の副長に体を洗ってもらうなんてどんな恐妻家なんだ、とか思わないでくださいね。鬼の副長でもデレデレするときくらいあるんです。

「十四郎さーん」

「んー?」

「いたっ」

「バカ、目瞑ってねェと泡が入るだろ」

「えへへ。もうすぐパパだね」

「そうだなぁ。なんか変な感じ」

「やっと家族になれるね」

「…あぁ」

私の後ろに座って私の髪を洗ってくれていた十四郎さんが不意に私を抱きしめたのがわかった。目を瞑ったままだから十四郎さんがどんな顔してるのかはわからないけど…。

「十四郎さん?」

「…がんばろうな」

「うん」

「ここにいるみんな、お前の味方だからな。」

「うん」

あーやばい。幸せだよ私は。お腹の赤ちゃんも十四郎さんの言葉に反応して動いてるよ。・・・うん、間違いなく私達は家族だ。

「十四郎さん、目開けて顔見たいから流して」

「あー……」

「ん?どうしたの」

「シたくなった」

「バカじゃないの」

「・・・・・・」

(早く生まれろー)
(暫くはシないってば)


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