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22

「副長の快気祝いだァァァァアアア!」
「飲むぞおおおお!!」
「名前が副長の女になったぞコノヤロォォォオオオ!」
「飲むぞおおおお!!」

あれから一週間。本当なら一週間で退院できるはずもない怪我だったんだけど、副長は主治医を脅して屯所に帰って来た。今日は副長の快気祝いの宴会らしい。

…おかしい。さっきハゲの原田が叫んでいたように、私は副長と思いを通じ合わせたはずなのだ。それなのに副長の態度は今までと変わる様子もなく。副長が帰って来て変わったことと言えば、沖田隊長の副長に対する嫌がらせが激化したことくらいだ。

ハゲや隊長がニヤニヤと私に酒をすすめてくるが、私は以前酒で失敗をしたことがある(らしい)ので酒は控える、と断った。

「はぁ」

ため息をつきながら大広間を出ると縁側に腰掛けて一人で飲んでいる副長が居た。

「主役がこんなところに居ていいんですか」

「俺が居ないことに気づいてねェだろ。最低だな、アイツら」

「でもみんな本当に心配してましたよ」

「そうか」

まぁ、座れよ。と促されたのて失礼しますと声をかけて隣に腰掛けた。盃をクイっと向けられたのでとりあえずお酌をした。

「お前さ、」

「なんですか?」

「俺でいいのか」

「なんですか…突然」

「俺ァ、いつ死ぬかわかんねェぞ。」

「そんなの私も一緒ですよ」

「それに…俺は、多分……お前と婚姻を結ばねェぞ」

「…理由を聞いても?」

副長は私の目を見ない。

「さっき言った通り俺はいつ死ぬかわからねェ身だ。…もし俺になんかあったとき籍なんか入れてたらお前が踏ん切りつけられねェだろ」

「副長は私が他の人を好きになるとでも思ってるんですか?私の愛は重いんですよ」

「俺が生きてる内はそんなことさせねェよ。これはもしもの話だ。……お前は別の奴と幸せになれ。あぁー…でもな、万年金欠の天パとサディスティック星の王子とかはやめとけよ」

「ふふ…はい」

こんなに寂しい未来の話はしたことがない。それでも副長の目は真剣で、私は少し笑ってごまかすしかなかった。

「それともう一つ…」

「なんですか?」

「二人の時くらい名前で呼んだらどうだ」

「土方さん?」

「違ェ」

「トシ…さん?」

「まぁ今はそのくらいで許してやるか」

「酔ってます?」

「今くらい良いだろ。…あ、そうだ。風呂あがったら俺の部屋来いよ」

「何か用事ですか?」

「…いい加減抱かせろ」

柄にもなく顔が赤くなったのは言うまでもなく。そんな私に副長…じゃなくて、トシさんは小さなリップノイズをたててキスをした。ドキドキはとまりそうにない。 沖田隊長に言われ、副長の部屋に偵察に来た山崎が切腹を命じられるのは翌朝の話。

(いつ死ぬかわかんねェ身だからこそ今は目一杯お前を…お前だけを愛してやる。覚悟しとけよ、)

<終>


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