15

名前を万事屋に連れて来て早三日。新聞やテレビを見る限りじゃ、まだ真選組は動いてないみたいだ。

「名前?」
「…………」
「お前いい加減寝たらどうだ?すげークマ出来てんぞ。可愛い顔が台無し」

名前はまるで借りてきた猫のようにおとなしく、ボーっと外を眺めるだけでろくに話しもしない。そればかりか飯も食わないし寝もしない。

「ねぇ銀ちゃん、」
「ん?」
「副長…私のこと…嫌いになっちゃったのかな…っ」

静かに涙を流しながら俺に問いかける名前は今にも壊れそうだった。自分の膝に額をくっつけて泣く名前の肩をそっと抱いて頭を撫でてやる。

「名前ー…お前がここに預けられた意味がわかる日がちゃんと来るからさ、お前は多串くんを信じて今は大人しく銀さんと一緒にいなさい。」

あいつを信じろなんて、何で言っちゃったかな俺。お前はそんなに多串君がいいのかよ。ちょっと悔しいじゃないの。

「……なぁ、その簪そんな大事なもんなの?」

名前がずっと大事そうに握ってる一本の簪。

「…副長が私にくれた唯一のものだから」

はぁ…多串くんも酷な奴だよね。こんなにお前のこと想ってるやつを置いて行くなんてさ。


[ prev / next ]

[戻る]