マザー

福母(フクモ)名前 / 個性:マザー
掃除洗濯料理等の家事全般、お母さんっぽいことは大体得意。雄英高校の全寮制への移行に伴い赴任。なにかと事件への遭遇が多かった1-Aの生徒のカウンセリング目的として寮母のような役割を果たす。(※相澤先生寄り)



雄英に全寮制が導入されることになったとき、高校時代の先輩である相澤さんからここの寮母になってくれないかと話をもらった。雄英出身とはいえ私はヒーロー科ではなく普通科出身だったのに、彼はよく私の個性を覚えていたなあと思う。

そうした経緯で寮母となった私は、寝るとき以外は大体この1-Aの子達の部屋がある棟で過ごしてている。

出会ってからまだ数日だか、ここの子たちはみんなとても可愛い。まだ子どもを産んだ経験などないが、みんなわが子のように可愛いし愛おしい。だから怪我なんてされると、とても心配で胸が痛い。

「出久くん!勝己くん!ちょっとここに座りなさい」

入寮したその日の晩に規則を破って個性を使って喧嘩をし、ボロボロになった彼らは担任の相澤さんより謹慎処分を下されていた。謹慎期間中は寮内の清掃活動を指示されていて、結構真面目に私の手伝いをしてくれている。他の子たちは学校行ったため、今ここには私と出久くんと勝己くんの三人しかいない。

「は、はい!なんでしょう…!」
「んだよ…だりぃ」

共有スペースのソファに隙間を空けて座る二人の間に無理やり腰を下ろし、両腕で二人を目一杯抱き寄せた。

「「!?」」
「ここにいる間は私のことお母さんと思って。私はあなたたちのことを息子だと思ってるから。そんな大切な子に怪我なんてされると心配なの」
「ごめんなさい」
「……」
「理由は知らないけど、自分を大事にして。ヒーローは体が資本よ」
「はい」
「勝己くんも。わかった?」
「わかってるよ」
「ならよし!傷の手当てしてあげるから」

リカバリーガールのような能力はないが、消毒をしてガーゼを取り替えてあげることくらいできる。
早く傷が治りますようにと願いを込めて処置をした。

そして夕方、晩ご飯の用意をしているとみんなが帰ってきて賑やかな声が響く。今日もたくさん相澤さんに無茶を言われたのだろうか、なんて。

「うわ〜!超いい匂いする!!」
「腹減ったー」
「ふふ、みんな早く荷物置いて着替えておいで」
「名前さんって本当にお母さんって感じ!」
「ママーあたし疲れたよー」

ここを自分の家だと思って、私を自分の母だと思って、心穏やかな時間を過ごしてほしい。それが私の唯一の願いだ。

「みんなそろそろ消灯時間よ。自分の部屋に戻ってね」
「まだママと話したいのにい」
「三奈ちゃんお話しはまた明日ね、夜更かしはお肌に悪いから」
「はあい…」
「はい!はい!おやすみのキスは有りですか!」
「峰田、さすがに無しだわ」
「んだよ上鳴…ノリ悪いな」
「相澤先生に殺されるぞマジで」
「先生のお気に入りらしいからな」
「マジで!?」
「はいはいもう寝なさい」
「じゃあ名前さんまた明日」
「おやすみ」

最後まで共有スペースに残っていた三奈ちゃん、実くん、電気くん、鋭児郎くんが自室に戻っていったところで私も仕事を切り上げ職員棟に戻った。

「おおーお疲れ。どうだった、あいつら」
「出久くんと勝己くんはきちんと掃除してましたよ。特に勝己くんは細かいところまで気を配って掃除してくれてて。見た目とは正反対の生真面目っぷりでした」
「爆豪は粗暴さが印象に残りがちだが成績は筆記もトップクラスだし何かと器用なやつだよ」
「相澤さん、担任楽しんでますね」
「…さあな」

1-Aの子たちの寮内での様子を報告するために訪れた相澤さんの部屋。事あるごとに合理性を問う彼の部屋は整理整頓されていて、とことん合理性を追求しているようだった。

「仕事まだ残ってるんですか?」
「ああ。テストは終わったが…やることは山積みだ」
「なにかお手伝いしましょうか?」
「いいよ。お前も忙しいんだからさっさと寝ろ」
「それじゃあひとつだけ」

個性をありったけ発動させて、机に向かったままお疲れモードな相澤さんの頭を包み込む。

「お疲れさまです」
「ん。ありがとな。少し楽になった」

幾分表情の柔らかくなった相澤さんにおやすみなさいと告げて部屋を出た。さあ、私もしっかり休んで可愛い我が子たちのためにまた頑張ろう。


前項戻る次項