総理大臣になったら

「ねえ、臨也が総理大臣になったらどうする?」

ある日曜日、暇で暇で仕方がなくなった私は臨也の家兼仕事場に赴いた。そしてパソコンをカタカタと打って仕事をしている(らしい)臨也にどうでもいい質問をぶつけてみた。

「それは単純にもしもの話?それとも俺には総理大臣になり得る可能性があると思ってそう遠くない未来を見据えて聞いているの?」

……なんだコイツ。
どう考えたって前者だろう。コイツ面倒くさい、知ってたけど。だいたい臨也なんかが総理大臣になったらこの国は、っていうか世界は滅亡への一途を辿ることになるだろう。そもそも臨也を支持する変態なんかいないんだからまず票を集められないというか…この話こそどうでもいいか。

「単純にもしもの話だと思ってよ面倒くさい」
「ははっ、名前ったら結構辛辣なんだね」
「いやいや面倒くさいから早く答えなよ」
「そうだねえ……」

ソファに寝転んだまま臨也を見ると、デスクに肘をついて緩く組んだ手の甲に顎を乗せてニヤニヤとこっちを見ていた。気持ちが悪い。

「で、どうするの」
「んー…なにもしないかな。そもそもそんなものになりたいとも思わないね。微塵も。」
「へ?」

正直驚いた。もっとこう…性格の悪い臨也だからこそ!って感じの答えが返ってくると思ったのに。

「本当に何もしないの?」
「俺は今のこの状況に満足しているからね。この高台から全ての駒たちが俺の思惑通りに動いて悩んで狼狽する姿を見ることほど楽しいものはないよ」
「あんたってやっぱり性格悪いよね」
「それに…総理大臣になったりしたら面倒くさいと思わない?きっと名前だって苦労すると思うけど」
「どうして私が?」
「ファーストレディーも忙しいと思うけど?」
「え、私が臨也のファーストレディーなの?」
「あれ、俺はそのつもりなんだけど」
「へー」
「嫌?」
「嫌じゃないけどびっくりした。臨也は私のことなんてなんとも思ってないと思ってたから」
「なんとも思ってなかったら俺は家に入れたりしないし仕事の途中でこんなどうでもいい質問に答えたりしないよ」
「嫌味なやつ」
「こんな俺は嫌い?」
「好き」
「じゃあいいじゃない。」
「うん」

なんか上手いこと丸めこまれたというか、なんというか無駄に敗北感があるんだけど。

「今のままが良いってことだよ」

臨也にしては爽やかな笑顔でそう言われ、この話は幕を閉じた。


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