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お花見

桜が咲けばやれ花見だやれ酒だ、と毎年恒例のように騒ぐみんながいる。土方さんが青筋を立てながらも満更ではない様子で「しょうがねェな、名前、用意をしてやってくれ」と名前ちゃんにに申し訳なさそうに頼んでいたから今夜は花見なんだろう。

屯所の庭に咲いた桜を囲むように各々が座り、賑やかに騒ぎ立てる。名前ちゃんが適当につまめるようにと作った料理はあれよあれよと無くなってしまい、みんなの手には酒だけが残っている。

「くぅ〜っ!やっぱり花見て一杯に限るなぁ!」
「新ぱっつぁんは酒が飲めればなんでもいいんだろ!」
「平助!テメェーも一緒だろうがよぅ!」
「何張り合ってんだよ、テメェらちっとは風流なんてものを理解してみやがれ。」
「そうだぞ新八、平助。お前ら花見酒くらい静かに出来んのか」
「なんだよ左之も斎藤も!桜が咲きゃそれだけでめでたいんだ!騒がなきゃ損だろ!」
「そうだぞ!一君だって今日の花見楽しみにしてたくせに!」

新八さん、平助くん、左之さん、一君の様子を眺めていると、名前ちゃんが土方さんに呼ばれた。いつになったら僕のところへ来てくれるんだろう。…土方さんは近藤さんと一緒に静かに桜とお酒を楽しんでいるようだ。

「名前、酒を用意してくれと頼んだのは俺だが…お前もちったァ飲んだらどうだ」
「そうだぞ名前君、せっかく美しい桜が咲いたんだ」
「ふふ、そうですね」
「総司のところにでも行ってお前もゆっくり飲め。たまにはこんな日も悪くねェだろ?」

土方さんがいつになく優しい目をして名前ちゃんの頭を撫でた。ここのところ何かと忙しかった名前ちゃんを労っているのか。あれ、なんかいらいらする。

騒ぎ続ける左之さんたちとは裏腹に、僕は縁側に腰掛けゆっくりと桜を眺める。やっと名前ちゃんが僕の隣に来た。

「やぁ名前ちゃん、土方さんと何を話していたのかな」
「お前もたまには飲めって」
「下戸のくせによく言うよね、土方さんも」
「総司は飲まないの?」
「どうせなら名前ちゃんにお酌してもらいたかったから君が来るのを待ってたんだよ」

僕はそう言って隣に座る名前ちゃんの腰に手をまわし、ぐっと引き寄せた。

「今日は随分と甘えん坊なんだね」
「君が中々来てくれないからね」
「ふふ、」

それからは二人で他愛もない話をしながらちびちびと酒を酌み交わした。

「おいテメェら、いつまでも騒いでんじゃねェぞ。明日も早いんだからそろそろ切り上げろ」
「えー!まだ全然飲んでないってば!」
「そうだぜ土方さん!こんな良い日に飲まないなんて…」
「新八、お前の組は明日の早朝に巡察があるだろう。組長が寝坊だなんて話にならんぞ」
「斎藤の言う通りだ、ほら、行くぞ」
「「えええぇ!!」」
「総司、名前、お前らも……は?」
「誰かさんが名前ちゃんに飲めっていうからこうなっちゃったんですからね」
「総司…名前って酒飲めないのか」
「さぁー」

名前ちゃんには僕と二人で居る時以外お酒を飲ませたことがないから皆驚いている。そりゃそうだ。だってあの名前ちゃんが僕に跨って正面から抱きついているんだから。所謂抱っこの状態だ。

「名前ちゃん、お花見終わりだって。そろそろ部屋に帰ろうか」
「やだあ…もうちょっとだけ、ね?そうちゃん…もっとギュ、ってしてて」
「もう可愛いなぁ名前ちゃんは…なんならチューもしてあげようか」
「んふふ…チュー」

満面の笑みを浮かべて僕に口付けをする名前ちゃんを見て、みんな顔を真っ赤にしたり真っ青にしたり、色々な反応を示している。普段きっちりしている分、こんなに甘えて見せる名前ちゃんはかなり珍しいんだろう。

「総司って…役得だな」
「…くぅ!羨ましいぜっ」
「こんな無防備になるんだなコイツ…可愛い奴だ」
「そ、総司。」
「なんです?土方さん」
「早く部屋に連れて帰ってやれ。これ以上こんな姿晒して…酔いがさめたら名前が可哀相だ」

土方さんに言われ、確かに。と納得する。名前ちゃんが今晩のことを知ったらさっきのみんなみたいに顔を真っ赤にしたり真っ青にしたりきっと忙しいんだろうな、

「名前ちゃん、」
「ん」
「お部屋に帰ろうか」
「そうじもいっしょ?」
「うん」
「だっこしてくれる?」
「うん」
「いっしょにねる?」
「もちろん」
「じゃあいく」
「良い子だね、じゃあ行こうか」

確かに桜もきれいだけど、やっぱり僕に寄り添ってくれる名前ちゃんの方が何倍も奇麗だと思った。翌朝、昨晩の話を聞かされ屯所に名前ちゃんの悲鳴がこだまするのはわかりきった話だ。

「ねーそうじ、」
「ん?どうしたの?」
「んふふ…だいすき」
「!…僕もだよ、世界で一番に君を愛してる」

さぁ今夜は甘い甘い一夜を過ごそうか。


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