なんだか眠れない。
別段寝苦しい夜というわけでも無いのだが、どうにも目が冴えてしまっている。眠れないからと言って羊を数えるほど子供でも無いし、こんな時間にお腹にモノを入れてしまえば明日の朝胃もたれに悩まされるのは必定だろう。さてどうしたものか。
隣で気持ちよさそうに眠っている徹の顔を意味なくみつめる。可愛いなあ…。むにゃむにゃと口を動かす徹をみつめながら良いことを思いついた。適度な疲労感があれば眠れるのでは無いかと。
「徹、ねえ、」
「んんー…」
「徹?」
「なに…名前ちゃん…寝ないの?」
「眠れなくて」
「ん…おいで、抱っこしてあげる」
目を開かないまま私に向かって両手を伸ばした徹の腕におとなしく収まってみる。逞しい腕にがっちりホールドされた所で頭上から寝息が聞こえていることに気づく。ねえ!徹!と、先程より少し大きい声で徹を呼ぶと、今度は不機嫌そうに目を開いた。
「…なにさ」
「だから、眠れないの」
「それさっき聞いた」
「一人だけ寝ないでよ」
「俺にどうしろっていうのさ。羊でも数えりゃいいの?」
「そんなの子供騙しだよ」
「なら教えてよ、大人な名前ちゃんがどうして欲しいのか」
「セックスしませんか?」
「………………………は?」
徹はさっきとは打って変わり大きく目を見開いた。まあ確かに今まで私から誘ったことなんて殆んど無かったが、そこまで驚くことではないだろう。私はセックスのあとの疲労感が好きだ。セックスのあと、徹に抱きしめられて、本能のままに目を閉じて眠りに落ちる、あの瞬間がたまらなく好きなのだ。
「もうこんな時間なのに?」
「だめ?」
「んー、明日休みだし名前ちゃんがいいならいいよ。でも珍しいね」
「疲れたら眠れるかと思って」
「は?」
「いつもセックスのあとって急に眠たくなるから」
「眠れないから寝てる俺を無理矢理起こしてセックスしようって?何それ。珍しく名前ちゃんから誘ってくれたって一瞬喜んだ俺の純情返して」
「ごめんごめん。じゃあやっぱりダメ?」
「んー…あ、そうだ」
徹の目が、ギラリと光った。まるで捕食者のソレのように。私の本能が警鐘を鳴らす。ヤバイことになったかもしれない。
「疲れたいんだったら、名前ちゃんが頑張ってくれるよね?」
こうなりゃヤケだ。
熱烈なキスを徹にぶちかまし、そのまま彼を押し倒した。夜は長い。
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