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いつかまた

各々が“ここ”を出る準備をしている。

とても辛く寂しいが、それは避けては通れない道。私たちが再び真選組として生きていくために通らなければならない道。

荷物をまとめ、すっかり殺風景になってしまった部屋を見渡す。振り返ってみても嫌な思い出は何一つ無かった。局長と一緒にテレビを見て笑ったりお互いに恋愛相談をしたり、沖田くんと一緒に土方さんに内緒でお菓子を食べたり。……そして土方さんとは幾度も愛し合った。くだらないことがきっかけで何度も喧嘩したけれど、その分何度も仲直りをして、数え切れない程愛し合った思い出の部屋。寂しくてたまらないけれど、次の場所でもきっと楽しい思い出を作ることが出来ると信じて私達は旅立たなければならない。

「名前…いるか?」
「土方さん…?どうぞ」

誰も居なかったはずの屯所。最後にここを出るのは私だと思っていたのに、予想外の愛しい人の声にセンチメンタルな気分も少しだけ和らいだ。

「どうしたんですか?」
「いや…なんつうか、お前とここで過ごすのが最後かと思うと…なんかな」
「私も似たようなこと考えてましたよ。悲しいこともあったけど、良い思い出の方が多いです」
「あぁ、そうだな」

土方さんは咥えていたタバコの火を消すと、突然私の前にしゃがみ込み、口づけをしながら私の体を畳へと押し倒した。

「土方さん?」
「なァ、最後にもう一度だけここでお前を抱かせてくれねェか」
「土方さんも案外寂しがりやなんですね」

私はそのまま、寂しさや悔しさをごまかすような土方さんの熱を受け入れた。

幾度となく口づけを交わしながら、土方さんはいつもより丁寧に私を抱いた。

「はぁ、はぁ、…っ…」
「なァ…名前…お前は俺が真選組副長の肩書きを失っても側にいてくれるか」

余韻に浸りながら土方さんの体に身を寄せると、彼は天井を見つめながら呟いたのだった。

「もう…当たり前じゃないですか。私は真選組副長でなくても土方十四郎という男を心から愛しているんですから」

私がそういうと、土方さんは無言で私の頭を撫でた。そう、私が愛しているのは土方十四郎。それは揺るぎない事実なのだ。

「江戸に帰ってきたら、またコッソリあのお店で二人で晩酌しましょう。」
「俺のキープしてる酒が万事屋に飲み尽くされてなけりゃいいな」
「まぁ私は土方さんと一緒ならどこでもいですけどね」
「あんま可愛いこと言ってるともう一回抱くぞ」
「え、うそ、あっ……」

そうして私は再び熱を持った彼と一つになるのだった。(いつの日か私達は必ずここへ戻る。)そう誓って、思い出が詰まった部屋の天井を目に焼き付けた。


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