――ジリリリリリリ
と万事屋の電話が鳴ったのは陽が落ちる少し前の時間だったと思う。電話は一人で依頼主の元まで行った銀さんからで、雨が降ってきたから傘を持って迎えに来てほしいとのこと。洗濯物を取り込んでから行くから少し待って欲しいと告げるとあっさり了承を得ることが出来た。
「銀さんからですか?」
「うん。雨降ってきちゃったから迎えに来てって」
「今日晴れるって言ってたのに…僕行きましょうか?」
「ううん、大丈夫。ちょっと洗濯物取り込んでくるね、」
「あぁ、それこそ僕がやりますから名前さんは早く銀さんの所に行ってあげてください」
「名前!私の傘使うアルカ?」
「神楽ちゃん大丈夫、ありがとね」
「あ、名前さん!帰りに――――」
本当の弟や妹のように可愛い二人に見送られ、万事屋を出て約束の場所に向かう。暫く歩くと団子屋の軒下で空を見上げている銀さんが見えてきた。なんとなく、銀さんが佇んでいる姿が様になっていて…声をかけるのも忘れて見入ってしまった。
「お、名前」
「(あ、)お疲れ様」
「悪いな、手間かけさせちまって」
「大丈夫だよ」
「…あー…傘、二本あんのな」
「ん?」
「てっきり相合傘かと」
「そんなことしたら銀さんの肩が濡れちゃうでしょ?」
前に何度か相合傘をしたことがあるけど、優しい銀さんは私の方に傘を傾けてくれるので銀さん自身の肩はいつもびしょ濡れなのだ。
「銀さんの肩を濡らすよりもこうやって手繋いで歩く方がいいなと思って」
お互いに傘をさし、隣を歩く銀さんの空いた手を握ると、銀さんは少しだけ驚いたあと私の手を力強く握り返した。
「悪くねェな、こういうの」
「うん、私も何だか良い気分だよ」
「なんでお前みたいな良い女が俺の横を歩いてるのか…不思議だな」
「ただ好きなだけだよ」
私が躊躇いもせずに愛の告白をすると、銀さんは耳を赤くして「…んだよ」と呟いた。どうやら照れてしまったようだ。
「銀さん、ケーキ屋さんに寄って行こう?」
「お、何?銀さんお疲れパーチーでもやってくれんの?」
「何言ってんの、今日は銀さんが生まれた日でしょ?」
「………あ」
「新八くんと神楽ちゃんも楽しみにしてるみたいだから」
―――帰りにケーキ屋に寄って来てもらえませんか?銀さんの誕生日ケーキ注文してあるんで!
「俺ァ…こんなに幸せで良いのかねェー…」
雨が上がって光の射す空を見上げて銀さんが呟いた。
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