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5.嵐の前の静けさ

(たまに来ないと不安になる)

うーん、おかしい。これは実におかしい。……何がおかしいのかというと、あれほど毎日毎時間毎休み時間といっていいほど私に付きまとっていた高杉君がここ一週間ほど全く姿を見せないのである。

担任に聞いても「家庭の事情とか言ってたっけなぁー」と適当に流されるし、土方君も沖田君も何も聞いていないとのことだった。

掛ってくるばかりで私から掛けることは一切なかった高杉君の携帯に電話をかけてみても「電波の届かないところにあるか電源が入っていないため…」というお決まりのアナウンスが流れてくるだけである。

こうなってくると少しだけ心配になってくる。少しだけね、本当に少しだけだから。ぶっちゃけた話ストーカー被害が無くなって嬉しい。でもクラスメートとして彼の消息の心配くらいはしてもいいと思う。いいよね?気になるとかじゃない。いや、気になるんだけどソレはクラスメートだからであって…って言い訳くさいなコレ。

「高杉の奴、どうしちまったんですかねィ」
「連絡とれねェしな」
「珍しいよね。今までも教室にいないことはあっても3日に1度は出席取りに来てたみたいだし」
「心配かィ?」
「…別に」
「素直じゃねェこった」
「私は素直です。小学校の通知表にもよく素直でいい子ですって書かれたもんだよコレ本当だから」
「別にそんなところまで聞いてねェ」

土方君と沖田君と話してみて連絡が取れないのは自分だけじゃないことがわかって少しだけ安心した。それからまた一週間が経ったけど、やっぱり高杉君の姿は教室になかった。担任に高杉君が住んでいるところを聞いて訪ねてみても誰もいなくて、メールボックスに溜まった広告やら何やらを見て随分と家に帰っていないという現実を再認識。

あんなにしつこかったストーカーがこうもあっさり身を引くと不思議と寂しい気もする。いや、彼のあれは完全なる迷惑行為なんだけど。

「高杉今日も来ないんですかねィ」
「あいつが居ようが居まいが俺には関係ないが、名前には大アリだな」
「あんだけ毎日付きまとってたからねィ…」
「不思議だよね…あんだけ付きまとわれるのが嫌だったのにこんだけ音沙汰ないと少し物足りない気もするもん」
「ほぉー…会えなくて寂しいってか」
「「!」」
「そこまで言ってないけど…確かにちょっと寂しいようなって私何言って…は?」

いやいやいやいや…なんか違う声がしたと思って振り返ったら渦中の人物!は!?

「たたた高杉君!?」
「高杉お前…今までどこ行ってたんだよ」
「フランス」
「「「は?」」」
「親父とお袋が旅行行くってきかなくてよォ…俺は行かねェって言ったんだが無理矢理。あ、そうだ。お前らに土産買ってきた」

忘 れ て た !

こいつこんな顔していいとこのボンボンだった!だからこんな態度でかいんだよ!だから不良のくせに頭いいんだよ!ってバカだけど!携帯もそりゃ圏外だろうよ!

「へー気がきくじゃねェか」
「土方さんに選択権はありやせんぜィ。俺が先に選びやす」
「どっちも大して変わらねェよ…ってコレはお前に」
「私のだけ袋小さい」
「文句言うな。値段はお前のが一番張ってんだ」
「開けていい?」
「あァ」
「うわ、きれい」
「だろ?」
「もらっていいの?」
「そのために買ってきたんだから良いに決まってんだろ」

高杉君がくれたのはネックレス。この真ん中のハートも可愛いなぁ…中々いい趣味してやがる。私がネックレスを見ながらうっとりしていると、土方君と沖田君も嬉しそうな声を上げた。手には…おそらくワインが。っていいのか!お前ら未成年だぞ!

「高杉君ありがとう、大事にする!」
「…お、おう」
「毎日つけるね」
「あ、あとさ…お前には別に土産あるんだ。放課後取りに来いよ」
「え?いいの?」
「あァ」

この時高杉君が口角をあげてニヤッと笑ったのを見逃した私は絶対にバカだ。

嵐の前の静けさ
(たまに来ないと不安になる)


「お邪魔しまーす。へぇ一人の割にはきれいにしてるんだ」
「お前に引かれたくないから片づけた」
「へ、へぇ」
「ほら、これやる」
「ありが…って!これ下着じゃん!ってなんかサイズピッタリっぽいし」
「お前のサイズくらい把握してる」
「意味分かんないし!ってかこんな情熱的な下着付けられるわけないじゃん!」
「下着姿見せろや、俺とヤろうぜ」
「無理無理無理無理!」

お母さん、簡単に他人の家には上がってごめんなさい。私貞操の危機です。

ストーカシリーズ<完>


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