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- ナノ -


ナマエと友達になってから一週間ほど。学校で見かければ笑顔で手を振ってくれるくらいの仲にはなった、はず。

「お前なんか最近ナマエちゃんといい感じじゃね?なんなの?嫌がらせ?」
「お隣さんからお友達になった」
「ってことは俺は友達以下?」
「そうだねえ〜」
「クッソ、マジかそれ」

俺とナマエの間では明確に関係が変わったが、周りから見ればそんなのは関係ないらしくナマエへの悪い噂は絶えない。俺と仲が良いナマエのことがよっぽど気にくわないやつらがいるらしい。

「平気?」
「まあ、慣れてるし」
「でもあれだよ、堂々としてな」
「…うん」
「俺が自分の意思でお前といるんだから」
「そうだね」
「帰りどっか行く?」
「デートの誘い?」
「まあ、そういうこと」

放課後こうしてナマエとどこかに行くことも増えた。だから俺たちが二人でいるところを目撃する人も増えた。まあこれは俺なりの牽制だったりするんだけど。俺自身がナマエが良くて一緒にいるんだということをわかってほしい。少しずつだったとしてもナマエへの悪い噂が減れば良い。どうせ俺はあと半年もすればここにはいないのだから、ナマエが一人になった時に大変な思いをしないように。

それからまた数日。毎日のようにとっていた連絡がパッタリ途絶えた。なにかあったのかとラインを送っても既読スルーときた。なんだ、なんなんだ。

「おー及川」
「岩ちゃんちょうどよかった。今日の放課後あそこの大学の練習行くでしょ?」
「ああ行く。…あのさ、俺、昨日ナマエと会って少し話した」
「え?岩ちゃんがナマエと?」
「進路どうすんのかって話になって…お前のことも聞かれたから言っちまった。悪ぃ…お前もうナマエに言ってると思ってた」
「あ…いや、うん。大丈夫。…それでか」
「なんかあったか」
「昨日の夜から盛大な既読スルー食らってる」
「マジですまん」
「言ってなかった俺が悪いかな。今日にでも話すよ」

気持ちの整理がつかなくて、ナマエにはまだ話していなかったが俺は東京の大学に進学すると決めている。もちろんバレーの強豪校に。きっとナマエはひとりぼっちになると思って落ち込んでしまうだろうから、時期を見て話すつもりだった。まあ結局違うところから耳に入って距離を置かれている現状を見れば、さっさと言ってしまうのが正解だったのだろうなと思うのだが。

練習が終わってスマホを見てもナマエからの連絡はない。これはもう強行突入しかないなと思いながら隣の家を目指す。明かりはついているのにインターホンを鳴らしても出て来る気配がないのは、扉の向こうにいるのが俺だとわかっているからなのだろう。チッ、強情なやつだ。

悪いが開ける気がないなら勝手に開けてやる、とドアノブに手を伸ばした瞬間暗い顔をしたナマエがドアを開けた。自慢の金髪はボサボサでいつもは化粧バッチリなのに今日はすっぴんで、元気がない。

「入るから」

何も言わないナマエの腕を引いて昔の記憶を頼りに居間に向かった。ばあちゃんのもので溢れた居間に、少しだけナマエのものが置いてある。

「はっきり最初に言ってなくてごめん」
「……なにを」
「俺が東京の大学に進学するってこと」
「だからなに」
「ナマエをおいていくこと、先に言わなくてごめん」
「もういいよ、もういい。徹の人生なんだし、私に気を遣わなくていい。もういいから、放っておいて」
「それは嫌だ」
「なんで」
「お前寂しいと他の男のとこいくじゃん」
「これ以上一緒にいたら離れるときつらいでしょ」
「良いんだよそれで。俺じゃないとダメになれ」

そう言ってナマエのボサボサの髪を撫でながら抱きしめた。俺がいなきゃダメになるくらい好きになってよ。嫌ならハッキリ言って、そしたらもう構わないから。

「…徹がいい」
「それ好きってこと?」
「割と好き」
「俺結構好きなんだけど」
「付き合ってあげてもいいよ」
「お前のオトモダチ全部切って」
「束縛するタイプ?」
「そうじゃなくても嫌でしょあれは」
「心配しなくてももうつるんでないよ」
「あっそ」
「キスしたい」
「俺上手いよ」
「言わなくていい」
「で、付き合うの、付き合わないの」
「…付き合う。だから他の女の子にヘラヘラしないで」
「お前もね」
「大丈夫、私にはもう徹だけだから」
「マッキーに謝らなきゃ」
「なんで?」
「お前と付き合いたいって言ってたから」
「ああ。バレーしてる姿はカッコよかったって言っといて」
「うん、そうする」

こうして何故か俺とナマエは付き合うことになった。


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