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「できたー!」

と私が叫んだ時には銀ちゃんも神楽ちゃんも新八君も何故だか疲弊しきっていた。

「何故ってこりゃないよね名前ちゃん。ある意味奇跡だからねコレ」

「アネゴ以外にもこんなの作れる人がいるなんて知らなかったネ」

「僕もです…」

万事屋の台所には廃墟と化していた。私には料理の才能というものが皆無だったらしい。結局私の手の中にあるチョコレートは9割9分銀ちゃんが作ってくれたものとなる。甘いものがそんなに好きじゃない副長用の少しビターなチョコレート。

「銀ちゃんありがとう!早速届けにいきたいと思います!片付けは明日の朝やるから放置してて!」

「待て待て待て待て、お前こんな時間に帰る気?もう夜中なのよお嬢さん」

「だって一刻も早くこのチョコを副長へ…」

「屯所に電話して泊まっていきなさい。それなら片付けも出来るだろ」

「泊まるなんて!嫁入り前の娘がそんな破廉恥なこと…」

「どのツラ下げて言ってんだ。誰がお前なんか襲うか。神楽と一緒に寝れば良いだろ」

「銀ちゃん、こんな焦げ臭い女と寝るのは嫌ヨ」

「神楽ちゃん!?やっぱり帰る」

「どうしても帰るってんなら俺が送ってってやるから」

「それが良いです、銀ちゃんありがと!」

「なら早くしろ」

「はい!神楽ちゃん新八君また明日!」

「さようなら」

「次来る時は梅味の酢昆布よろしくネ!」

「はーい!」

銀ちゃんの背中を追いかけて急いで下に降りると、ポンとヘルメットを投げ渡された。

「早く乗れ」

「ありがとう」

「お前さァそんなに好きなわけ?多串君」

「多串じゃなくて土方ね」

「知ってるけど」

「うーん。好きって言うかそれさえ超越した愛みたいな」

「聞いた俺がバカでした」

こんな風にくだらない会話を繰り広げていると屯所の前まであっという間だった。着いたところで見慣れたシルエットに気付く。

「副長?」

「ったくこんな夜中まで連絡無しで何やってんだよバカが!ってか何で万事屋までいんだよ」

「こんな夜中に多串君の大切な名前ちゃんを一人歩きさせたら襲われちゃうかもしれないから送ってあげたんですぅ」

「副長心配してくれたんですか?」

「俺じゃねェよ。近藤さんがお前が帰ってこないって泣きべそかくから仕方なくだなァ」

「ぷぷっ素直じゃないの」

「うるせェ!」

「副長、近所迷惑!」

「悪ィ」

「じゃ、銀さん帰るから」

「銀ちゃんありがとう!また明日ね」

「おう」

銀ちゃんを見送って振り向くと、副長は既に屯所に戻っていた。私も急いであとを追いかけた。