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【言えよ、俺が欲しいって】


以前、総悟の姉が賊に丸め込まれたことがあった。あいつにはあいつの事情があって、早く身を固めて総悟を安心させたいという思いが、真選組の親類縁者との関係が出来れば商売が上手くいくだろうと踏んだあの野郎の思惑とタイミング悪く一致してしまった結果ではあったのだが。あの件があってから恐らくこういうことも起こるかも知れないと覚悟はしていた。でもナマエだけは俺が守ると誓ったから、側に置いて守ると誓ったから、それなのに、

「副長……」

「怪我は…って聞くまでもねェか。痛い、よな」

「ちょっと打たれただけですよ。沖田隊長のバズーカーの方が痛いです。あの、敵は?」

「んなもん皆殺しだこの野郎」

「え、それじゃあ情報収集できないじゃないですか、副長バカだな〜」

「バカはどっちだよ。強がりやがって」

縄を解いてきつく抱きしめた。
幸いなことに頬を打たれただけで、乱暴はされていないようだった。それでもこいつは女で今までにないくらい怖い思いをしたに違いない。

「早く冷やさないとな」

「はい」

腫れた頬に唇を寄せると、ナマエの肩がビクッと揺れた。

「怖かったんだろ?」

「やだな副長…鬼の副長の側近ですよ?そんなわけ」

「泣くなって」

「泣いてなんか」

「俺が怖いか」

「怖いわけないです。いや、普段は怖いけど」

「んだとコラ」

「はは、その調子です。普段の副長らしくしててください、その方が安心するから」

なんで慰めようとして元気付けられてるんだ俺ァ。ダメだな。
腕を引いて立ち上がらせると、そのままの勢いで抱きついてきたナマエを驚きながらも抱きとめた。

「副長あのですね、体は触られてないんだけど」

「んだよ」

「キスされたんです」

「なっ!」

「だからさ、屯所に戻る前に、あの」

視線を彷徨わせながらもじもじと体をくねらせるナマエ。こいつの言いたいことはわかるが、言わせたいのが男の性というものか。

「言いたいことあるなら言えよ」

「だから、」

中々確信をついてこないナマエの顎をクイっと持ち上げ俺は言った。

「言えよ、俺が欲しいって」

顔を赤くして俺を見つめる瞳が揺れた。切れた口の端を気にしながらキスを落とすとナマエの腕が背中に回った。

ーーーカシャ

「「は?」」

「お二人さーん、あっちの処理終わったんでそろそろ良いですかィ?」

「ってめ!総悟!!!」

「沖田隊長!?その写メどうする気!?!?」

「明日屯所の掲示板に張り出してやりまさァ」

「は!?やめて!!!」

写メを見せびらかす総悟とそんな総悟を追いかけて走り回るナマエ。存外元気そうでなにより、か。


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