【俺になら何されてもいいって言えよ】
「えー、副長本当に出張に行っちゃうんですか?」
「明日から三泊の予定だ。近藤さんのこと頼んだぞ」
「…へーい」
真選組の紅一点は、頭はキレるし剣の腕前もそこそこある。女にしておくには勿体ないくらいに。俺らの昔馴染みだからというわけではなく実力があるからあいつは副長補佐という幹部職まで登りつめた。まあ、単純に土方さんが自分のそばに置いておきたいだけっていう理由も少なからずあるんだろうが。副長補佐というだけあって、ナマエは何かと土方さんにベッタリだ。
…俺の女になったくせに。
「お前いつまで土方さんに尻尾振ってるんでィ」
「そんなんじゃないですぅ。どっかの腹黒彼氏さんの魔の手から逃れるためには土方さんのそばにいるのが安全だって知ってるんですぅ。」
可愛くて可愛くてイジメ甲斐がありすぎて、色んなことをしている内にいつの間にかこいつは少しずつ俺のことを避けるようになった。避ける、は言い過ぎか。避けるというかイジメから逃れるために大人を盾に使うようになった、の方が正しいかもしれない。
「残念だったなァ。明日から土方さん出張なんだって?」
「そうなんだよね、どうしよう」
「俺が知るかよ。大体俺ァやりたい放題できるから楽しみにしてるんでさァ」
「やりたい放題って何よ」
「色々と試したいものがあるんでィ」
「絶対そんなの付き合わない」
「お前そろそろ俺になら何されてもいいとか言えねェのかィ」
「言うわけないじゃん!そんなこと言った日にゃ裸に亀甲縛りのまま町中歩けとか言われそうだもん!」
「随分と具体的だな。あれ?もしかしてお前そっち系?」
「バカか!」
武州にいるころから筋金入りのじゃじゃ馬姫だったこいつを、育ちの良い俺が乗りこなすのは少しだけ難しいのかも知れない。
姉上、見てますか。
こっちはなんだかんだ楽しいですぜィ。
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