「もうすぐね、お別れなんだと思う」
「戻り方がわかったのか?」
「ううん、わからない。でももうすぐお別れしなきゃいけないような気がする」
「お前…その足……!」

タイミングが良いのか悪いのか、透け始めた私の足。土方くんは見るのが初めてだからひどく驚いている。

「ちょっと前から手とか足とかが透けるようになったの。沖田くんは知ってるよ。初めは透けてもすぐ戻ってたんだけどね、最近は透ける部分が広まってるし戻るまでにかなり時間がかかるようになってきてる」
「お前が総悟とコソコソしてたのはそのせいか…」
「私一人いなくなっても、誰も困らないと思った。だから言わずに居なくなろうって。でも沖田くんが土方くんには言えって」
「あいつが?」
「土方くんは…大切な人を失ったことがあるからって」
「…余計なことを」
「どんな人だった?」
「俺だけじゃねェよ。近藤さんにとっても総悟にとっても、大切なやつだったからな」
「そうなんだ」
「ま、過去のことだ。お前とあいつじゃ顔面偏差値も器量も何もかも違うから比較対象にすらなんねェよ。気にすんな」
「なにそれ!余計気にするよ!」
「はは、そうか。悪いな」

土方くんはまるで私の話を気にも留めない様子でからりと笑った。

「お前が元いたところに帰れるってんなら、そんな良いことねェじゃねェか。なんでそんなに暗い顔してんだよ」
「色々不安なの。乙女心察してよ」
「生憎俺はそんなに出来たやつじゃねェよ。でもまァ…お前がいなくなったら屯所は静かになっちまうな」
「少しは寂しがってくれる?」
「近藤さん辺りは泣くんじゃねェか」
「土方くんは?」
「お前が幸せになれるんだったらそれで良いよ」

予想だにしていなかった甘いセリフに顔が赤くなったのがわかった。土方くんはそんな私を見て笑ったあと、仕事に戻っていった。

…土方くん、ありがとう。


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