「ちょっといって来ますね!」
「ちょっとだぞ。金魚すくい終わったらすぐに帰ってこい。じゃねェと2人まとめて切腹だぞコラ」
「土方さん、つまらねェこと言うんじゃねェやィ。せっかくの祭なのに興が冷めちまう」
「お前ェがバックレる気満々だから言ってんだよ」

何度も何度もすぐに戻って来いと念を押されてやっとその場を離れた。目指すは金魚すくいの出店だ。

「はー。土方さんは融通がきかねェ。せっかくの祭なのにつまらねェことばっかり言うんでさァ」
「まあ一応お仕事中だからね。許してくれただけありがたいのかな」
「まあな。お前ェがいなかったら絶対良いとは言わねェよ。なんだかんだナマエには甘いんでさァ土方さんは」

そうこうしている内に出店に到着した。
いよいよ、壮絶なバトルが始まる。

無言で金魚をすくい続けること数分。先に紙が破れてしまったのは勿論私だ。私のお椀には金魚が4匹。これでもかなり頑張った方だが…隣の沖田くんのお椀には私の10倍以上の金魚が入っている。なにこれ人間業?早すぎて腕見えないんですけど!!おじさん涙目じゃん。もうやめてあげなよ沖田くん…!

「うっし。飽きたし帰るか。」

沖田くんはこんなにいらねーといってすくった金魚を全て返して立ち上がった。結局お持ち帰りは私がすくった4匹の金魚のみだ。

「勝負は俺の勝ちだな。そうだなー、アイス奢ってくれィ」
「えー、いいけど。近藤くんがくれたお小遣いだし」
「うっし!決まりだねィ」

沖田くんはそういうと私の手を引いてお目当ての出店へ急ぐ。しばらくすると出店についたので金魚すくい勝負に負けた代償として2人分のアイス代を支払い、人混みを抜けて道端の段差に腰掛けてそれを食べた。

「ちょっと小便してくらァ」
「仮にも私女子なんだから言わなくていいよ」
「お前ェ絶対そこ動くんじゃねェぞ。なんかあったらすぐ呼べ。」
「はーい」

沖田くんはそういうと喧騒の中に消えて行った。ふー。少し疲れたなあ。土方くんお仕事頑張ってるかな。そんなこと思いながら人混みを眺めているとなんだか見たことあるような人が…

「高杉くん?」

確かに私がいた世界の高杉くんとは少し、雰囲気が違う。私の視線に気づいた高杉くんはニヤリと笑った。


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