【 きみの知らない傷口 】
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季節は巡り秋が来た。もうすぐ先生の命日がやってくる。…嫌な季節。私はいつもこの季節がくると逃げるように里を出た。任務ならなんでも良かった。色だろうが何だろうが。色任務で知らない男に抱かれることよりも、先生を思い出すことの方が、先生がいない現実を目の当たりにする方が何倍も辛かった。
先生の葬儀で泣き叫ぶ私を見ていた三代目様は、私の胸中を察してくれたため、ワガママをいう私の為にいつも里の外へ出向く任務を与えてくれた。しかし今この里を治めているのは五代目火影、綱手様なのである。
「綱手様、いまなんて」
「しばらく休暇を取れといっている」
「しかし!今私以外に色任務をこなせる忍はいないんでしょう?」
「もう手配は澄んでいる。今回は暗部が出向いた」
「私にも任務を・・・!」
「お前を休ませてくれと頼まれてな」
「誰がそんなことを!」
「カカシだよ」
綱手様に一礼して火影室を出た私が向かったのはカカシの家だった。どうしてそんな余計なことを…!
ーードンドン!!
「なーにさ、こんな夜中に」
「話がある」
「どうしたの」
「何で火影様にあんなこと…!」
「ああ、あれね」
玄関でこんなこと大声で喋るのもあれだし入れば?と促され、カカシの家に足を踏み入れた。とてもシンプルでカカシらしい生活感の少ない部屋。
「まあ座りなよ」
「長居するつもりはない」
「お茶でも飲む?それとも、」
「カカシ!!!!」
「…はいはい、わかったよ」
カカシを一睨みすると、カカシは諦めた様にソファに座った。
「どうしてあんなこと言ったの」
「お前が無理してるから休ませたかった」
「無理なんか!」
「してない?本当にそう言える?」
「・・・ッ・・・」
「もうさ、辞めにしなよ」
「何を今更・・・」
「受け入れなよ、先生は死んだ。お前が逃げ続けても現実は変わらない」
「やめて」
「ナマエ、いつまで色任務続けるの?俺はお前に色任務なんてして欲しくない」
「もうやめて、色任務だって立派な任務よ!里が私を必要としてくれるなら何だってする!里を守るためならなんでもする!!それがミナト先生の意志を継ぐってことでしょ!?」
「ナマエ・・・」
「私から任務を奪わないでよ…!誰かに必要とされてなきゃ生きてなんかいられない!!」
「俺にはナマエが必要だよ。何よりも大切だから守ると決めたんだ」
「それはオビトやリンに対する償いのつもり?」
「いーや、俺の気持ち。俺はいつお前が里に帰ってきてもいいように、里を守ってきたつもりだよ。でもそろそろ…お前も一緒に先生が残した子供達の為に里を守るべきなんじゃない?」
「そんなの、私なんかに…」
「もう一度言うよ。俺がお前を必要としてるんだ、俺と一緒にいてよ」
何も言えず、悲しそうに微笑んだカカシの家を飛び出した。