「綺麗・・・」

思わずそう呟いてしまうほどだった。披露宴で嬉しそうに笑っているお姉ちゃんは、今まで見た中で一番美しく、一番輝いている。それに比べて。…自分の貧相なスタイルではドレスに着られている状態だ。

「そんなことはありません、お嬢様も奥様と変わらず…とてもお美しい。」

「土方さん…慰めてくれてありがとう。昔からずっと思ってたの、お姉ちゃんはお母さんに似てすごく美人なのにどうして私は違うんだろうって」

「!…何度でも言いますが、お嬢様はとてもお美しいです」

「ふふ、」

苦笑いを浮かべる私と、そんな私を慰める土方さんは披露宴会場の隅で静かにお姉ちゃんたちの姿を眺めている。

「馬子にも衣装だな」

「そういう総悟君こそ。まともな格好すれば素敵に見えるよ」

「俺は元が良いんで。土方さんとは違ってね」

「お前な…」

「土方さんは素敵よ?」

「お嬢様、」

「この会場に居るどんな人よりもね」

「勿体なきお言葉…お褒めに預かり光栄です」

「チェ、」

総悟君が手にしているのはシャンパンではないのだろうか。いや、確実にそうだ。私と一緒で未成年な筈なのに…、いいのかそれで。

「ねぇ土方さん」

「なんでしょう」

「ちょっと人酔いしたみたい」

「気分が優れないのですか?」

「さっきあのジュース飲んでから何か体が火照って…フラフラする」

「あのジュース‥‥‥お言葉ですが、あちらはお酒です。間違って飲まれてしまったのですね」

「げ、」

「少し風に当たりましょう。御手を」

まるでどこかの国の王子様のように自然に手を差し伸べてくれた土方さんの手を取って私は夜風に当たりに行くのだった。

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