『ししょー!』



呼ばれた声に目を向ければ、庭を駆け回る小さな獅子。周囲は雪で白く染まっており、彼女の蒼い瞳がなければ、その綺麗な白に同化してしまっている。



『雪だよ!雪!!』


「寒くないのかい?」


『今は大丈夫!けど、戻ったときが……あ。』



言ったそばから戻ってしまう姿に、邦光が慌てた様子で毛布や衣服を持って駆け寄った。




きゃっきゃと無邪気に笑うこの子を見て、心配して声を荒げる邦光を見て、"私も"このまま変わらず過ごせればと思ってしまう。







『変わることがこわいの。』



あの時そう言った少女は、大きな蒼い瞳からぽろぽろと涙を流した。それはどの感情から出たものかはわからない。


変わっていく環境への恐れか、そんなことを考えてしまう自分を悔やんでのものか。

何よりも彼らのことを大切にするなつめ。彼らにとって良い状況である今、変化を避けることはないはずだ。


"彼女"のおかげで、この子たちの周りは良い方へと変わっているのだから。






『ししょー?』


「……ん?なんだい。」



心配性な邦光に巻かれたのだろう毛布を肩にかけ、見上げる瞳はあの時とは違い濡れてはいない。思わずほっとする私の表情を、この子は決して見逃さなかった。



『何かあった?』


ふっと笑みを漏れる。凍てついたその小さな両手を包む。大きくなっても変わらずその手は、自身のそれにすんなりと包み込まれてしまう程。






愛おしい。



十二支(彼ら)が想うそれとは違う、もちろん夾や由希のものとも。私には彼らのように、その小さな身体を抱きしめることはできない。



それでも、凍てついたその手を暖めることはできる。


濡れた瞳を受け止めることができる。


いつまでもそばにいてあげることができる。



この子が私を必要としなくなるまで…。





「守ってみせるよ。」



この子の笑顔が消えないように。


この子が哀しみの涙に溺れないように。





それがこの子に対して私のできる、小さくて大きな贈り物。




My Gift to You.
(心を込めた愛の贈り物)










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