「ハァ…。」
自然と出たため息が白くなって消える。オレの小さなそれなんて、何とも思わない程に騒がしく煌びやかな町。
楽しそうに腕を組んで歩く男女。それを見て何も思わない程、鈍感なオレじゃないさ。
今日に始まったことじゃない。
任務の時に何度も思い出す。
ふわりとしたあの子の雰囲気は、オレの…いや、オレだけじゃないさ。オレたちの心を容易に温めてくれる。もちろん、あのユウでさえも。
オレの知らないオレを引き出してしまうことにも、きっとあの子は気づいてはいない。
会いたいと思う回数は数え切れない。
会えないと疼くこのきゅっとする胸の痛み。
もうオレがあの子をどう思ってるかなんて明白さね。そんなこと、とっくの昔に分かってんだ。
屋根の上から不意に人混みを見やる。ここにいるはずのない姿を探してしまう自分にまたため息が出た。
「オレってばハルに会えないとダメダメさ〜。」
今頃、科学班のやつらと楽しくやってるだろうか。泣かずに笑っているだろうか。
「…………。」
黙ってすくっと立ち上がる。
屋根から降りるとその足を真っ直ぐに駅へと向けた。本当は明日帰ろうと思ってたけどやめだ。
今すぐ会いたい。
本当はずっとそばにいて欲しいし、オレもどこにも行きたくない。アレンやユウ、リナリーには悪いけど、ずっとオレのことだけ考えていてほしい。
けど優しいあの子には到底無理な話だし、何てったって格好悪いさ。
それに、今はアレンたちと同等に想ってくれているだけで十分さ。
「帰ったら言う。もう我慢できん。」
ぽつりと呟く自分の言葉に、身体が熱くなるのは気のせいじゃない。
もう一度吐き出した息は、さっきまでのものよりも長く白く残った。
クリスマスソング
(君が好きだ)
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