「ハルちゃん！」


名前を呼ばれドキッとする。何も悪いことはしていないが、彼に名前を呼ばれると、余計に鼓動がうるさくなることが多かった。



『…何。』


「ナミさんが呼んでたよ。」


『………わかった。』


何故か落ち込む自身の心情に首をかしげた。黙ったまま胸に手を当てるハルを見て、サンジは心配そうに彼女の顔を覗き込む。



「胸でも痛いのかい？」


『…痛い、わけじゃない。』


『大丈夫だ。』と言いながら、覗き込む彼と目を合わせた。



『………なんだろ。』


「ちょ、チョッパー呼んでくるか？！」


慌てた様子のサンジを見て、思わずふふっと笑みがこぼれる。そして再度『大丈夫。』と笑ってみせた。



「ほんとに大丈夫かい？一回見てもらった方が…。」


そっと肩を支える大きな腕。途端にハルの身体はピタリと動きを止め、あからさまに強張った。それに気づかないはずもないサンジは、何の意思表示かすぐさま両手を挙げてみせる。



「えっと…ハルちゃん？」


『だ…大丈夫。』



口ではそう言うものの、身体は正直だ。サンジが離れると、大きく息をつく小さな身体。


『……。』


「ハルちゃん、もしかして…。」


『好きとかそんなんじゃないからなっ！！』


「………え。」



徐々に大きくなる空色の瞳。サンジは自身が一瞬でボッと赤面するのがわかる。言った本人も自身の言葉の意味を理解したのかハッとするも、ぶんぶんっと頭を大きく左右に振った。




『そう…、違うから！』


「な、なんでその考えに至ったんだい？」



『…サンジに呼ばれたらドキッとする。』


「それだけ？」


『……用がただの伝言で残念に思った。』


「うん…。」


『…目が合っても触られても、なんでかドキッとする。』



促される様にぽろぽろと溢れる言葉。何でもないかのように話すハルに対し、聴いているサンジがどんどん赤面する羽目となる。


空色の瞳はきょとんとまるく、そんな彼をじっと見上げた。



『…やっぱり何か病気なんだ。』



「うーん、病気だけどチョッパーにゃ治せないし。…おれとしても治って欲しくはないな。」



『……違う…、違うからなっ！』



嬉しそうなサンジを見て、眉を寄せるハル。何度も否定するそれが、彼の笑みを一層深める。どうにもならない状況に大きく息をつくと、『ナミのとこ行ってくる！！』と告げてその場を後にした。








好きとかじゃない
(素直じゃない)