『いらない。そんなもの。』
「バッサリだな。」
なつめは隊士たちの誕生日を祝って胴上げをしたいとの申し出を、迷うことなく切り捨てた。土方はタバコを吹かせながら、くくっと笑う。
『そんなんいつでもできるし。』
「なら何がいいんだよ。」
「やってほしいことでも?」と首をかしげる総悟に、なつめはにやっと笑う。ぎょっとするのは勘のいい土方。
気づいたって止められない。
『今日はみんなで寝よう!』
「いやいやいやいや!!だめだろっ!?」
素早くツッコむ土方になつめは『うるさい。』と突っぱねる。
「いいけどそんなことでいいのか?」
『いいの!いっつもあたしだけ別やもん!久しぶりに一緒に寝たい!!』
「そうだな!今日くらいいいだろう!」
近藤の許可もおり、わっと盛り上がる一同。
一人だけ納得していない男、土方は勢いよく異論を唱えた。
「こんな奴でも女だぞ!?こんな野獣どもと一緒に寝させられるか!!」
「なつめですぜィ?まさか土方さん、意識してんですかぃ?」
「してねぇよ!やめろよ!そーゆうの!!」
総悟がニヤリと笑う。それも意味深げに言うものだから、もちろん突っ込まざるをえない。
『ほんとは昔みたいにしてほしいけど、さすがにね。』
「………。」
へらっと笑うなつめ。じっと少女を見るのは彼女と付き合いの長い三人。他の隊員たちは笑う少女に、嬉しげに声を上げる。
「遠慮なんていらないさ。」
『……っ!』
近藤の言葉と同時に目の前が真っ暗になる。背中に回る温かい腕、大きな身体に包まれているのだとすぐにわかった。
それは以前から何度も体験したものだから。
「いくつになったってするさ、なつめがさせてくれるまでな!」
にっと笑う近藤になつめの頬はあっという間に緩む。頬を染め嬉しそうに笑うなつめに、近藤はがしがしと少女の頭を撫で回した。
「ほら。」
振り向くと両手を広げる総悟。いつになく優しく笑う相手に、思いっきり抱きつくなつめ。それを難なく受け止めてしまうところも、今までの経験上あっての慣れなのかもしれない。
ぽんぽんっと背中を軽く叩く総悟は、まるで兄のようで、いつものような悪ガキの面影がない。
『今日は優しいね。』
「ばーか。なつめにはいつも優しくしてんぞ。」
くくっと笑いあう悪ガキ。
そんな二人を見ていた男は、ムッとしながらも声をかける。
「長ェ。おら、来い。」
同じく両手を広げて待つのは、タバコを咥え仏頂面で構える土方。総悟から離れたなつめは、そんな彼を横目にぽつりと言い放つ。
『偉そうに。』
「あぁん!?」
『おまえが来い!』
一瞬でカッとなる土方だが、そう言った少女の顔が我慢しきれない程に破顔していたため、呆れたようにため息をつきながら彼女を抱きしめた。
土方の背中に回る細い腕は可愛らしくぎゅっと力が入り、それに応えるかのように小さな身体を抱きしめ返す。
そして
「うぉおい!!?」
「俺より長く抱きしめようなんて調子に乗っちゃダメですぜぃ。」
なつめと土方の間に振り下ろされる一本の真剣。辛うじて避ける土方だが、あまりの出来事に声を荒げる。
「おっまえ!?なつめに当たったらどーすんだっ!!」
「なつめが避けれねぇわけないでさァ。当たるとしたらあんただけですぜィ。」
「腹たつんですけど。」
『当たればよかったのに。』
「腹たつんですけどォオ!!!」
毎年同じ日に同じ様に
(これからもずっと)
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