「ただいまさ〜!!」


任務を終えて教団へ帰れば、迎えてくれる多くの家族たち。科学班のみんなは、相変わらずクマを作りながら仕事をしている。

リーバーたちに挨拶をしながらも、オレの足は真っ直ぐ彼女の元へ向かっていた。



「ハル!」

オレの声に肩を震わせると、慌てて振り返る少女は、桃色の大きな瞳をさらに見開き驚く。


『随分早かったんですね、ラビさん。』

「頑張っちゃったんさ〜v」

褒めて欲しくてへらっと笑いながら答えれば、ハルも嬉しそうに微笑んだ。


『お怪我はないですか?』

「大丈夫さね。今回は大した相手じゃなかったから。」

『ブックマンさんも?』

「もちろん!」と笑顔で返すと、ホッとしたように胸を撫で下ろす。相変わらず人の心配ばかりのハルに、オレはたまらず手を伸ばした。




『…ひゃ!?』


頬に手を添えたとき、短く漏れた声。オレは構うことなく、そのままハルの顔を上に向ける。

案の定、頬を真っ赤に染める彼女には、しっかりとクマが刻まれていた。



「また寝てないん?」

『よ、要領が悪いので…、時間がかかっちゃうんですよ…。』


困ったように微笑むハルは、目元を隠すように慌てて手で覆う。そんな姿にすら、思わずきゅんとしてしまうから不思議だ。

ハルになら何をされても、嫌いになれないと思う。それは出会ったあの日から感じていたこと。


「幸せさ…。」

『……?』

きょとんとする彼女に、思わず微笑むと、ハルも眉を下げながらもふわりと笑顔を見せてくれる。


どんな辛い任務だろうと、ハルが待ってくれてるって思ったら、何でも頑張れる気がする。大袈裟だって笑われるかもしれないけど、それくらい思えるほど、ハルがいるだけで毎日が彩られていくんだ。



『ラビさん…?お疲れですか?』

「ふふ、何でもないんさ。」


これ以上、仕事の邪魔をするのは申し訳ないと感じ、踵を返すと短い声と共に掴まれる団服の裾。

驚いて振り返ると、顔を真っ赤にした想い人が震える唇を動かした。



『お、おかえりなさい…っ!』


そんな何気ない言葉でも、君が唱えるものならば、まるで魔法のように胸に染み渡る。




「ただいまさ。」










Anniversary
(何気ない今日という日が)











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