『今日は泊まってくー!』
「……そうだね、寒いしね。」
『…寒いって関係ある?』
「ない…かな?」
『紅野は相変わらず可笑しいね!』
けらけらと笑う彼女はどんよりとした雲を追い払ってしまうんじゃないかってくらい明るい。自然と俺も笑ってしまうんだ。
そんな彼女がじっと空を見上げる。今は見えない蒼い空のような瞳で。
『雪降るのかな?』
「どうだろう。これだけ寒いと降るかもしれないね。」
『本当!?』
瞬間ぱあっと表情を輝かせるなつめに、思わずくすっと微笑む。本当に単純だなぁ。
『紅野は雪好き?』
嬉しそうに見上げる彼女の頭を、俺は優しく撫でる。まるで猫のように目を細めるなつめに小さな声で答えるんだ。
「好きだよ。」
もちろん本当の意味に気づかないなつめは、笑顔を浮かべて無邪気に返すんだ。
『あたしもー!』
すぐに空へ向けられる蒼い瞳。だから少し意地悪をしたくなって…。
「何が?」
って聞いたんだ。そしたらなつめはきょとんとした顔をして首をかしげる。
『……?』
「何が好きなの?」
『え…?ゆ、雪だよ。』
吃りながら答えるなつめに、俺はゆっくりと口角をあげる。
「俺は?」
『は、はぁあ!?』
一瞬で真っ赤になるなつめが可愛くて仕方がない。
「…俺より雪が好き?」
『な…』
口をぱくぱくさせて俺を見上げるなつめを優しく抱き締めた。恥ずかしさからか俺の胸に顔を埋めた彼女に、小さな返事をもらうんだ。
『雪より…紅野、が好き…。』
「ふふっ…知ってる。」
思わずこぼれた笑みに腕の中の君は、恥ずかしそうに俺の背中に腕を回した。
この熱は消えぬまま
(胸の中の熱は永遠)
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