01


 





次の日の朝。

ギルドではラクサスの証言により、ハッピーがS級クエストを持っていったことが明らかになっていた。ハッピーが持っていった…、つまりクエストを行うのはナツとルーシィ。


おかげでギルドは朝から騒然としている。



「これァ重大なルール違反だ。ジジイ!奴等は帰り次第、破門…だよなァ?」

「………」

「つーか、あの程度の実力でS級に挑むたァ、帰っちゃこねぇだろうがなァ」


二階に悠々と座るラクサスにミラジェーンが歩み寄り尋ねた。



「ラクサス、知っててなんで止めなかったの!?」

「オレにゃ泥棒猫が紙切れくわえて逃げてったようにしか見えなかったんだよ。まさかあれがハッピーで、ナツがS級に行っちまった…なんて思いもよらなかったなァ」

ニッとミラジェーンを見上げるラクサス。


「あんたのそんな顔、久しぶりだなァ」

嬉しそうに笑うラクサスとは対称的に、普段の彼女からは想像出来ない表情で、ラクサスを睨み付けるミラジェーン。




「まずいのぉ…。消えた依頼書は?」

「呪われた島…ガルナです」


腕組みをし悩むマスター・マカロフに、依然としてラクサスを睨み付けるミラジェーンが答える。



「なんと…っ!!」

「「ガルナ島!!?」」

「そんな無茶な!!」

「「あいつらやっぱりバカだ!!」」


騒然とするギルド。マカロフは二階に座るラクサスへ叫んだ。

「ラクサス!連れ戻してこい!!」

「冗談!オレはこれから仕事なんだァ。てめぇのケツを拭けねぇ魔導士はこのギルドにはいねぇ……だろ?」

「今ここにいる中で、おまえ以外誰がナツを力ずくで連れ戻せる!?」





―――ガタッ





同時にひとりの青年が立ち上がる。


「ジイさん…、そりゃあ聞き捨てならねぇなぁ」

「グレイ…」



そしてタイミングよく、誰かがギルドに入ってきた。







『おぉ、みんないる!』

「「な……っ」」

『なんかぴりぴりしてるねぇ、どうしたの?』


相変わらずふわふわしたハルは、一同の視線を受けながらマカロフの元まで歩み寄る。
「……ハル!」

『あ…ただいま、じいじ!みんな!』


ふわりと笑うハルに一瞬の静寂の後、わあーっと騒がしくなるギルド。相変わらず雰囲気に頬を緩めたハルに、ガバッとひとつの影が抱きついた。



『ぐ…グレイ?』

「いつ帰ったんだよ!?」

『き……昨日の、夜』

「ハルから離れろよー!!」


エーラを出したアイスに突進され、ぶっ飛ぶグレイに苦笑するハルは、ゆっくりマカロフへと向き直る。



『で、どうしたの?』

「ハル、帰ってきたところ悪いんじゃが…S級に向かったナツたちを連れ戻してきてくれんか?」

『あー…、ナツたちね』


視線を泳がせながら苦笑する彼女を、アイスはじとっと見上げていた。




「行くことねぇよ」

『……ラクサス』


見上げればにやりと笑うラクサス。そんな彼へ『久しぶりだねぇ』と目を細める。



「おまえが行くことねぇだろ」

『…いや、それが……』

「……あァ?」

『いや、なんでもない!けどじいじの頼みだから行ってくるよ』


ははっと誤魔化すように笑うハルに、結局こうなるのか…と、項垂れるアイスだった。








 



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