02


 






「今ならオレ、ハルに勝てる」

『………100年早いよ』


膝を抱えるハルは顔を埋め、ナツを見ようとはしない。



「今のハルならルーシィでも勝てんじゃねぇの?」

『……何が言いたいの?意外にナツって言葉が遠回しだよね』

「かっこつけてんじゃねぇよっ!!」


突然の怒鳴り声に、ルーシィやウェンディがビクッと肩を震わした。当の本人であるハルは動じることなく、顔を埋めたまま。



「護る護るってなァ、ちょっとはオレらにも護らせろよ!ひとりで突っ走ってんじゃねぇ!!ハルはそこまで強かねぇだろうが!!!」

『だって…っ!!』

「「……っ…」」

『だって…護らないと、…護るって、そう考えないと…怖いんだっ!護るために強くなったんだから…っ』


初めて聞く悲痛なハルの叫びにルーシィは何も言えず拳を握る。ナツは震える小さな少女を強引に抱き締めた。



「誰かを護ってばっかのおまえを護るのが、オレやグレイ、アイスたちだろうが」

『あたしは護りたいんだ!護られるほど弱くないっ!護ってくれるのはあの人だけで…いい』

「……強情だな。早く気づけよ…」


一先ず言い争いが鎮火したと感じたルーシィはホッと胸を撫で下ろしたのだった。















「聞いていいかしら?」


言いづらそうに手をあげるルーシィに魔力は弱っているものの、いつもの調子に戻ったハルが小首をかしげる。



「なんでハルも失われた魔法(ロストマジック)である治癒魔法が使えるの?」

『……なんでだろうね?アイスリーヌに教わった覚えはないんだよねー。けど誰かに…教わったんだ。』

「へぇ…」


ハッキリしない返答にモヤモヤとした霧がかかる。そんなルーシィの心情を察したハルはへらっと笑いながら告げた。

『秘密にする気はないから思い出したらちゃんと言うよ』

「そ、そんなつもりじゃ…」



けらけらと笑うハルはエルザの治癒を終えたウェンディに目をやる。

「終わりました…。エルザさんの体内から毒は完全に消えました…」


ホッとする一同の耳に盛大な音が響き渡った。





―――ボゴォオオッ
















「これは…、ニルヴァーナ!?」


強い光とヒビキの言葉に目を見開く。黙ってそれを見つめていたハルは、ナツが拳を握りしめていることに気がついた。




『……ナツ?』

「あの光…、ジェラールがいるっ!!」


途端走り出すナツをハルは何も言わず見送ると、自責の念にかられるウェンディを見やる。

『………』



アイスを見れば言いづらそうな表情で首をかしげていた。


ハルは目を覚まし起き上がったエルザに何も言わない。ただただ追うことが出来ないほど、魔力を消費してしまった自分に唇を噛みしめていた。





「…すまない、ハル」


エルザの小さな声に拳を握りしめる。




「ちょっとエルザがいなくなってるわ!あんた気づいてたんじゃないの!?」

『……止められないよ。とりあえずあたしたちも二人を追おう…』


眉を下げるハルにシャルルは訝しげに表情を変える。





「私のせいだ…。私のせいで…」


依然として自責の念にかられるウェンディに、ヒビキが攻撃を仕掛ける。



『………』

気を失ったウェンディを抱えるヒビキは黙ってハルに向かってうなずくと、ナツを追って走り出した。











 



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