01


 








『……っ…』


「ハル!?」



ルーシィの制止も聞かずふらっと立ち上がるハルは、ふと隣に眠るエルザに目をやる。


『……なんで、エルザ…が、どうしたの?』

「エルザはコブラが連れていた毒蛇にやられたの!今みんなが解毒の魔法、治癒魔法が使えるウェンディを助けに行ってるわ!」

『……解毒の、魔法』

ルーシィの言う通りエルザの右腕は真っ青になっている。自分の手を見つめたまま黙りこむハルは、何かを確かめるように辺りを見回した。



『…ナツとグレイは?』

「え?二人もウェンディを助けに…行ったわよ?」

『……それなら』


エルザの隣に座り込むと両手を前に出す。白い光に包まれるエルザにルーシィは目をまるくした。

離れた場所で古文書(アーカイブ)を操作していたヒビキも目を見開く。



『……っ』

「ハル!?」

ふらっと倒れるハルにルーシィが駆け寄ると、隣で眠るエルザの腕にあった毒の侵食が小さくなっていた。


「なんで…?」

「まさか彼女も治癒魔法が?」

『……エルザがいなきゃ…、勝てないっ…から』

荒い呼吸を繰り返すハルは、苦しそうに笑うと再びエルザの上に両手を置く。







「やめなさいよ!!」


――バシッ



手をはたかれたハルはキッとルーシィを睨みつけた。


『何すんの!?まだ全ての毒を消しきれてない!』

「そんなことよりハルの魔力が」

『そんなことって何!?あたしが護るって決めたのに…っ、こんな毒くらい楽勝だって…』

「じゃあなんでさっきナツとグレイがいないか確認したのよ!?」


ルーシィは目に涙を溜めながらハルの両肩を掴む。



「ナツもグレイもみんなの前でハルが治癒魔法を使えるなんて、一言も言わなかったわ。エルザが危険な状況でよ?さっき魔力を使ったばかりのハルには危険だと思ったからじゃないの!?」

『……へ、平気だよ』

「どうしてハルはいつも無理ばっかりするのよ!!あんたはナツやグレイの気持ちが全然わかってない!!」


ぐっと息を飲むハルに涙ながらに訴えるルーシィ。ヒビキは黙ったまま二人を見つめる。




「ありがとな、ルーシィ。」

「『……っ…』」


茂みから聞こえた声に振り向けば、両手にウェンディ、アイスとハッピーとシャルルを抱えたナツがハルを見据えていた。




「ハルを止めてくれて」

『………』


ばつが悪そうにうつむくハルにナツは何も言わず、気を失っているウェンディに声をかける。





「……っ、あ…ご、ごめんなさい!わ…私…っ」


目を覚ますや否や頭を抱え謝り出すウェンディ。ナツは真っ直ぐに彼女を見ると、勢いよく頭をさげた。



「今はそんなことどうでもいい!!エルザが毒蛇にやられたんだ…。助けてくれ!頼む!!」

「……毒?」


エルザを見れば僅かだが確かに毒により皮膚の色が変わっている。



「これ以上、ハルに魔力は使わせたくねぇんだ…。」

『……っ…』

「ハルさんに?…よくわかりませんけど、もちろんです!やります!!」


元気にうなずくウェンディに顔をあげたナツ。すぐさま治癒に掛かるウェンディを横目に、むっとしたままのハルの隣に座った。









 



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