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そんな彼らに歓喜するのはルーシィのみで、ナツは馬車酔いで倒れこみ、グレイは服を脱ぎひとりで騒ぎ、ハルに至っては暇そうにいまだ屋敷内を見渡していた。
「噂以上の美しさ…」
「はじめまして!水竜(ウンディーネ)」
「ほら、こっちに来いよ」
『……あの…』
きょとんとするハルの肩に腕を回すレンと、手を取るイヴ。いつの間にか準備されたソファーに座らされると、何故か目の前に出されるジュース。
『…ありがとうございます』
礼を言いながらもこくこくと飲むハルを見て、彼らはさらに盛り上がる。
「美しい容貌に加えて、こんな愛らしさも供えているなんて…っ」
「妖精の女王(ティターニア)とはまた違った魅力だよ」
「……可憐だ」
好き勝手に言い放題なトライメンズに、ピクッと反応したナツとグレイは面白くなさそうに、三人を睨み付けた。
『ごちそうさま〜』
「ハル、少しは遠慮というものを…」
「いいんですよ、妖精の女王」
「僕たちが好きでそうしてるんだから」
「おまえも…、楽にしてくれ」
「そ…そうか」
キラキラと装飾を付けたように笑うヒビキやイヴに、思わずたじろぐエルザ。ハルと同じように接待を受けるエルザに続いて、ルーシィまでソファーに座らされる。
『………エルザ』
「…あぁ」
ハルの呼びかけにため息をつきながら頷くエルザに、ルーシィは何事かと疑問を持つがすぐにわかった。
「そこまで警戒することはないさ」
「何!?この甘い声…っ」
思わず胸を高鳴らせるルーシィを見て、苦笑するしかないハル。
「エルザさん、今日も相変わらずいい匂い(パルファム)だ!もちろんハルさんもね」
「……っ…」
『…あはは』
ガタガタと体を震わすエルザを見て、ルーシィとハッピーがその珍しい光景に目を見開く。もちろん彼・一夜の姿を目の当たりにしたルーシィは、甘い声に騙された自分を恥じていた。
「君たちの話は聞いてるよ。」
一夜はフェアリーテイルの5人に向き合うとエルザから順に視線を動かす。
「エルザさんにルーシィさん、ハルさん!そしてその他。」
あからさまな対応に眉を寄せる男たち。
「エルザさんは一夜様の彼女さんでしたかー」
「なら僕は水竜(ウンディーネ)を…」
「いや、僕が…」
「オレが…」
「おいおい…。青い天馬のクソいけめん共!!」
三人揃ってハルに言い寄る姿に黙っているはずのない男が、一匹の猫と共にハルの前に出た。
「うちの姫様に手ェ出すんじゃねぇよ…。てか気安くハルに触ってんなよ…」
「……おまえらにハルの相手が務まるわけねぇだろ」
グレイとアイスの訴えに、ヒビキたちも負けじと睨み返す。
「喧嘩か!オレも混ぜてくれ!」
「やめんか、貴様ら…っ!?」
「…エルザさん」
訴えるナツに呆れたエルザが声をかけるが、背筋を走る悪寒に体を震わすと思わず一夜を殴り飛ばした。
「メーン」
入り口に向け飛んでいく一夜だったが、ある人物によって頭を掴まれ氷付けにされてしまう。
「いい挨拶だな…。おまえらは、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)上等か?」
そこに立つ男にフェアリーテイルの面々は目を見開いた。
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