02


 






―――アカネリゾート。


王国で最も人気のある海辺の観光地である。広大なテーマパークと隣接する高級ホテル。一度訪れたら癖になる魅力的なビーチ。そしてどこまでも広がる美しい海。





『うわー!来てみたかったんだよね、ここ!』


たくさんの人で賑わうビーチにいち早く降り立ったのは、意外にもナツではなくハルだった。レモン色の水着を着たハルに続いて、エルザとルーシィもやってくる。

「ハルってば元気ねぇ…」

「まだまだ子どもだな」

『また子ども扱いする!!』


むっとするハルと微笑むエルザを見比べるルーシィだったが、ふと視線を止めた。

「エルザって胸大きいのねぇ」

「る、ルーシィ…」

「?」


ぎょっとするエルザに目をまるくしたルーシィ。ゆっくり視線を動かすとうつむくハルが視界に入る。



「ちょっと…ハル?」

『……どーせ、あたしはちっちゃいよーだ』

「…え?」


むすっと拗ねるハルの表情から下へと視線を下げると、エルザとは違い目立たない胸。決して小さくはないがエルザとルーシィに挟まれれば仕方がない。




「あ、あのね…そういう意味じゃなくて」


「おまえら出るの早ぇなァ!」

「普通男のが先に待ってる側だろ」


「救世主(ナツ・グレイ)!!」



目を輝かせるルーシィが慌てて二人へとバトンタッチするが、本人たちは何のことやらわかっていない。


「なんだァ?ルーシィのやつ」

「トイレじゃねぇのか」

「デリカシーってもんがないよね、二人とも」

「…あい」

勝手なことを言うナツとグレイに呆れるアイスとハッピー。そして目の前にはついさっきルーシィの言葉の刃に刺されたばかりのハル。



「おっ!ハル、相変わらず…」

「(やめて!ナツ〜〜っ!!)」


逆撫でするような言動を匂わすナツに見ていたルーシィが心の奥で叫ぶ。






「細ぇ体だな!ルーシィとは大違いだァ」

『………細い?』

「あぁ。抱きしめやすい良い体型ってことだよ!こうやっ……て!?」



―――ゴッ

「…おい、ナツ」

「調子に乗るなよ…」

「す…すびません」



ハルを抱きしめようとしたナツを、もちろんグレイとアイスが止めに入る。残されたハルは自分の体を見ながら、『良い、体型?』と呟いていた。










『アイスだ!』

「ほら、呼ばれてるよ?」

「ハッピー…気づいてて言ってるよな」


ナツたちが泳ぐ中、ハルはハッピーとアイスとビーチに寝転がっていた。目の前を行く人がアイスを食べているのを見てハルは何度も声をあげる。



「ハルはアイスが好きだよね」

『うん。好きだよ、アイス!』

へらっと緩む表情は何故かアイス本人に向けられ、ぼっと真っ赤になる









かと思いきや。





「知ってる」

『そっかー!』

思っていたより平然と答えるアイスに、くすっと笑う。二人を交互に見たあと、ハッピーは口許に手をやり一言。



「でぇきてるぅう!!」


『あはは』

「やめ…ハッピー!!」



ハッピーがエーラを出し逃げると、アイスも怒りながらその場を飛び立つ。


『あんまり遠くまで行っちゃだめだよー』

二人を見届け視線を海へと移した。楽しそうにはしゃぐナツたち。



『アイスでも食べようかな…』

起き上がったハルを覆う複数の影。知らない臭いにゆっくりと顔をあげた。









 



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