▼ 01
「アイスリーヌがハルを育ててくれた竜<ドラゴン>なのか?」
『うん。ナツのイグニールと同じ日にいなくなっちゃったんだけどね』
「ハル…俺はいなくならねぇぞ!!」
『グレイ?』
「馬鹿!オレだっていなくなんねぇ!!」
「ふふっ!ナツもグレイもハルが大好きだねぇ」
「「ち、ちげぇって!!///」」
『ほんとに?』
「「「………?」」」
『ほんとにいなくならない?』
「あ、あたりまえだ!!」
「俺がずっと一緒にいてやる!!」
「オレがずっと一緒にいるんだ!!」
「あたしも、約束するよ!」
『みんな一緒…?』
「うん!ずっとみんな一緒だよ!」
「約束だ!」
「約束する!」
『…うん』
「…ハル!!!」
『……っ!!?』
耳元で大声を出され背筋を伸ばすハル。肩に乗ったアイスが呆れたようにため息をついた。
「何、ぼーっとしてんだよ!!」
『してないよ…。ぼーっとなんて』
むっと口を尖らせるハルに再びため息をつくアイス。ハルは構わずギルドへと向かう。
ガルナ島から帰ってきたハルはナツたちと顔を合わせないよう、そのまま部屋に引きこもっていた。今は久しぶりにギルドへの道を歩いている最中だ。
「いくらハルでも最近働きすぎだったからな。今はまだ休めって」
『大丈夫だって!』
にこっと笑顔を見せるが、いつもの余裕はない。それは疲労から来たものか、それとも精神的に来たものか。アイスには後者だと感じてならなかった。
『あーあ、今日はミラのとこでご飯食べてこっか!』
「うん……っ!?ハル!!」
『どーしたの?』
空飛ぶアイスを見上げていたハルは、アイスの指差す方向を見る。その先は今向かっているギルド。
『……何あれ…』
ギルドに刺さる太い異物。ハルは反射的にその場を駆け出していた。
太い鉄の棒によって穴だらけになっているギルドを見上げ目を見開くハル。みんなの安否を心配しギルドへ駆け込むと、臭いがする地下へと下りていく。
『……みんな…!』
「無事みたいだな」
地下ではいつものように酒場が経営されており、ナツを始めほとんどのギルドのみんながそこにいた。
「ハル…」
『ミラ!上のあれ、どうしたの?』
「……ファントム」
『幽鬼の支配者(ファントムロード)?』
黙り込むミラジェーンにハルは辺りを見回すと、ほっとしたように微笑む。
『怪我人はいないんだね』
「え…?うん、夜中に襲われたみたいだから…」
『ならじいじも動かないでしょ?』
それだけ言うとリクエストボードへ向かい立つ。そんなハルの姿にざわっと騒がしくなるギルド内。
『これ行こうと思ってたんだよねぇ。ミラ!これ行ってくるね』
「え、わ…わかったわ」
戸惑うミラジェーンに眉を下げつつも笑みを浮かべるハル。
『大丈夫!半日で終わらせてくるから!』
「い…いってらっしゃい」
『うん!』
意気揚々と出かけるハルにミラジェーンと同じように戸惑いながらも、声をかける仲間たちにハルも同じように笑みを見せていた。
そして結局、ナツやグレイとは一度も目を合わすことなく出ていってしまった。
→