▼ 02
「水竜は自ら残っておるのだ。」
そう。ハルはミネルバに押し出されまいと、水圧で威力を殺していたのだった。
「いたぶり甲斐のあるやつよのう。」
『…はぁ……はぁ…』
ハルはすでに虫の息。何とか顔をあげて仲間たちへと視線を向ける。
『……っ…。』
彼女の視線の先には心配そうに戦況を見つめる相棒の姿。ほっとするハルはミネルバと向き合うと、震える腕を広げた。
「今さら何をするつもりだ?」
『…み…んなの、期…待……うらぎれ、ないから…っ。』
あたりの水が少女の身体を覆う。魔力の増幅に眉を寄せるミネルバ。
『滅竜奥義…』
「させぬ!」
『蒼蛇水流演舞!!』
強烈な水流を纏ったハルが、ミネルバへと突進する。避けることなく手をかざすミネルバ。
「残念だったな、水竜。」
『……っ!?』
ハルが纏って水流は一瞬にして消え去る。愕然とするハルに、ミネルバは不敵な笑みを浮かべた。
「よう耐えたと褒めておこう。」
再び連続攻撃を受けるハル。ミネルバは手足を休めることなく、一方的な攻撃を与えていく。
そしてやはり少女の身体は場外に出ることはない。
「ハル!もういいよ!!」
「無茶すんな!!」
涙ながらに訴えるルーシィとナツ。少女のぼろぼろの身体に仲間たちは顔を歪めた。
「もうよいとお許しが出たぞ?」
『……。』
くたっと浮かぶ身体はもう動かない。ミネルバの声も仲間の声にも、反応が出来ない。
「楽しませてもらったぞ。思いのほか、弱くて脆かったが…。」
『…っ。』
「あれほど騒がれていた魔導士であったから、期待しておったのだが…。所詮妖精の尻尾の魔導士であったのう。」
ハルの首を掴むミネルバは、動けないほど憔悴した少女に嘲笑する。
抵抗出来ないハルの首をギリっと絞めていくミネルバ。
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