▼ 01
「このまま場外に出してやろう。もう良いだろう。2位は確実なのだから。」
ミネルバの言うとおり、すでに5分経過しており残すは1位2位を決めるだけ。
その瞬間、ハルの手に力がはいる。
『言ったでしょ…。ぶっ飛ばしてやる…て。』
「……。」
ハルの言葉に黙り込むミネルバは怒りに顔を歪ませた。
「…っ、頭が高いぞ!妖精の尻尾!我らこそ天下一のギルド・剣咬の虎ぞ!!誰に向かってものを申しておるのだ!!!」
『……っ!?』
顔面を殴り飛ばすミネルバ。突然の豹変にガードも出来ない。態勢を整えれば、すでに目の前に現れる怒り狂ったミネルバの顔。
『…な…っ!』
「簡単には負かしてやらんぞ。」
片腕を掴まれ持ち上げられ、腹部へと入る蹴り。逃げられない状態にあるため、衝撃は緩和されることなく全ての力が腹部へとかかる。
『水竜の…咆哮!!!』
ゼロ距離からの咆哮。水中ということもあり、さらなる負荷がかかっていた。
しかし、ミネルバの手はハルから離れない。
『な、んで…』
「そなたでは妾には勝てぬ。」
にやっと笑うミネルバに目を見開く。一方的な攻撃を受けるハルに、先ほどまで沸き立っていた会場は静まっていた。
殴り飛ばされるハルの身体は、場外に出る直前に勢いを失くす。ミネルバに腕を掴まれ再び連続攻撃を浴びせられるハル。
「もうやめろよ!!」
「あの女…っ。」
ギリっと怒りを露わにするナツやラクサス。
ミネルバはハルの頭を掴み上げると、場外から訴えるナツたちへと告げた。
「妾は水竜を場外に出そうとしておるぞ。」
「おまえがそれを阻んでるんだろうが!!!」
「それは違う。」
ミネルバはすでに息の小さなハルを思い切り蹴飛ばす。勢いよく場外へと向かう小さな身体。
しかし、やはり場外に出る直前に勢いを失くした。
ミネルバは何もしていないのに。
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