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『ラクサス出てるの!?』
「ハル…っ!」
走り込んできたハルに不安げなハッピーが飛びついた。目をまるくしてフィールドに目をやれば、一方的にやられているラクサスの姿。
相手はレイヴンテイルのアレクセイ。
誰もがその光景を信じられないでいる。しかし目の前ではやられ続けているラクサス。
『な、なんで…っ?』
「レイヴンテイルに不正な動きはないんだぞ!?」
『……っ!?』
ウォーレンの声にハルはハッピーを抱えたままに、身体を乗り出した。
『ラクサス!!』
少女の声にも彼は反応を示さない。
『あたしの代わりにぶっ飛ばしてくれるんじゃなかったの!?』
"安心しろ。おれが代わりにぶっ飛ばしてやるよ。…競技の中でな。"
『約束は守るのがラクサスでしょ!!?』
その瞬間、消えるラクサスとアレクセイ。
そのフィールドに立つのは無傷のラクサスだけ。ラクサスの目の前にはレイヴンテイルのメンバー5人が倒れていた。
そして仮面の外れたアレクセイの正体は、レイヴンテイルのマスター…イワンだった。
「びーびー喚くんじゃねえよ。俺がいつおまえとの約束を破ったよ、ハル。」
『ラクサス!!』
口元に笑みを浮かべ見上げるラクサス。ハルはほっと胸を撫で下ろしていた。
見えないところでの5人がかりの攻撃と、マスターの大会参戦という反則を犯したレイヴンテイル。協議の末、3年間の大会出場権剥奪が言い渡された。
「安心したか?」
『……ちょっと疑った。』
ぽんっと頭に手を置くラクサスにハルはうつむきながら呟く。
「信じるんだろ?」
『……っ。』
"家族を信じることも、時には必要だ。"
「最後まで信じろ…。」
離れていくラクサスにハルは、嬉しそうに笑ったのだった。
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