▼ 01
『7年ぶりなの!?』
「今さらかよ!!」
天狼島組が帰ってきてから、フェアリーテイルは宴会状態が続いていた。おどろくハルに、相変わらずだと笑う仲間たち。
「ハル姉!オレ、強くなったんだぜ!!」
その声に振り向けば、嬉しそうに見上げるロメオ。手にはマカオと同じ紫色の炎。
『ロメオは父ちゃんと同じで、もっと強くなるよ!』
「父ちゃんよりナツ兄みたいになりたいんだ!」
「…ろ、ロメオ。」
涙ぐむマカオに苦笑しながら、ハルはロメオの頭を撫でる。その表情は晴れることなく、わいわいと騒ぐ仲間たちを見た。
『7年か…。』
嬉しそうに酒を手にする彼らに、眉を下げる。ハルの記憶に残る容姿でないにしろ、目の前で笑うのは変わらない大切な仲間たちだ。
今は笑っている彼らだが、この7年間どれほど涙を流したのだろうか。
仲間たちが帰ってこない中、どれだけの不安が彼らを襲ったのだろうか。
自分は、どれだけの絶望を彼らに味合わせてしまったのだろうか。
『……っ…。』
笑顔がいっぱいの空間で、ハルは小さな拳を握りしめた。過ぎてしまったことだが、自身が原因で彼らを苦しめたのは事実。
「ハル!」
『な、何?』
リーダスに呼ばれ何とか笑みを浮かべると、彼は一枚の絵を差し出した。
そこに描かれているのは、彼女自身の特徴であるふわりとした笑みを浮かべた一人の女性。
『これ…あた、し?』
「想像して描いてみたんだ。結局ハルは変わらないままで帰ってきてくれたけど。」
そう言って笑うリーダスに、ハルはうまく笑い返すことが出来なかった。
その紙に描かれているのは、今のハルより大人になったハル。今のようなあどけなさはなく、すっかり大人の女性として描かれていた。
「おっ、ハルならこんな感じになってそうだな!」
「確かにな!笑顔は今と変わらねえな!」
けらけらと笑うナツとグレイは、何の反応も示さない彼女の表情を覗き込み、思わずぎょっとした。
「な…ハルっ!?」
「ど、どうしたんだよ!!」
『……っ…。』
一筋の涙が床へと落ちる。それは紛れもなく彼女の頬を流れたもの。
『リーダス…が、どんな…思いで、描いたんだろ……て考えたら…、苦し…くて、…ご、ごめん…っ。』
「……ハル。」
絵を胸に抱きしめぐずぐずと泣き始める少女。リーダスは変わらない少女に嬉しそうに笑うが、ナツとグレイは突然の涙に慌てふためく。
「ハル。この7年間、オレたちはとっても辛かった。」
『……っ。』
「けど、今こうしてハルたちみんなが帰ってきてくれただけで、7年分の辛さなんて吹き飛んじまった!」
リーダスの優しい言葉に言葉を詰まらせる。それでも顔をあげない少女の頭を、誰かの腕がぐしゃぐしゃとかき回した。
「顔、あげてみろ。」
『………。』
言われた通りにすれば、目の前には微笑むラクサス。涙に濡れた表情で小首をかしげれば、彼はギルド全体が見えるように横へと避ける。
『…ラクサス?』
「今ここにいるやつはみんなリーダスと同じ考えだ。」
『……っ!』
マカオもワカバもラキもウォーレンもマックスもロメオも。ギルドに残っていたはずの彼らは、とても嬉しそうで笑顔が絶えていない。
「リーダスも言っただろ。辛かったはずの7年も、俺たちの経験したあの1日も…」
「こうやってみんなそろえばハッピーなんだよ!!」
『…ぅわ!?』
突然のラクサスの背から飛び出してきたハッピーに、驚きながらも何とか受け止める。
ハルの肩にはぴとっとアイスが掴まった。
「おまえはすぐそうやって深く考えすぎなんだ!」
『アイス…。』
「7年間、辛い思いさせちゃったけど、これからもっと楽しい思い出作ればいいよっ!」
『ハッピー…、そうだね!』
ラクサス、そしてアイスとハッピーに励まされふわりと笑顔をみせるハルに、ナツとグレイはほっとする。
しかし
「「(オレがその役、やりたかった…。)」」
と、心の中で呟くのだった。
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