01









『7年ぶりなの!?』

「今さらかよ!!」


天狼島組が帰ってきてから、フェアリーテイルは宴会状態が続いていた。おどろくハルに、相変わらずだと笑う仲間たち。



「ハル姉!オレ、強くなったんだぜ!!」

その声に振り向けば、嬉しそうに見上げるロメオ。手にはマカオと同じ紫色の炎。


『ロメオは父ちゃんと同じで、もっと強くなるよ!』

「父ちゃんよりナツ兄みたいになりたいんだ!」


「…ろ、ロメオ。」

涙ぐむマカオに苦笑しながら、ハルはロメオの頭を撫でる。その表情は晴れることなく、わいわいと騒ぐ仲間たちを見た。




『7年か…。』

嬉しそうに酒を手にする彼らに、眉を下げる。ハルの記憶に残る容姿でないにしろ、目の前で笑うのは変わらない大切な仲間たちだ。




今は笑っている彼らだが、この7年間どれほど涙を流したのだろうか。

仲間たちが帰ってこない中、どれだけの不安が彼らを襲ったのだろうか。


自分は、どれだけの絶望を彼らに味合わせてしまったのだろうか。



『……っ…。』

笑顔がいっぱいの空間で、ハルは小さな拳を握りしめた。過ぎてしまったことだが、自身が原因で彼らを苦しめたのは事実。




「ハル!」

『な、何?』


リーダスに呼ばれ何とか笑みを浮かべると、彼は一枚の絵を差し出した。

そこに描かれているのは、彼女自身の特徴であるふわりとした笑みを浮かべた一人の女性。



『これ…あた、し?』

「想像して描いてみたんだ。結局ハルは変わらないままで帰ってきてくれたけど。」

そう言って笑うリーダスに、ハルはうまく笑い返すことが出来なかった。


その紙に描かれているのは、今のハルより大人になったハル。今のようなあどけなさはなく、すっかり大人の女性として描かれていた。




「おっ、ハルならこんな感じになってそうだな!」

「確かにな!笑顔は今と変わらねえな!」

けらけらと笑うナツとグレイは、何の反応も示さない彼女の表情を覗き込み、思わずぎょっとした。



「な…ハルっ!?」

「ど、どうしたんだよ!!」

『……っ…。』

一筋の涙が床へと落ちる。それは紛れもなく彼女の頬を流れたもの。


『リーダス…が、どんな…思いで、描いたんだろ……て考えたら…、苦し…くて、…ご、ごめん…っ。』

「……ハル。」

絵を胸に抱きしめぐずぐずと泣き始める少女。リーダスは変わらない少女に嬉しそうに笑うが、ナツとグレイは突然の涙に慌てふためく。


「ハル。この7年間、オレたちはとっても辛かった。」

『……っ。』

「けど、今こうしてハルたちみんなが帰ってきてくれただけで、7年分の辛さなんて吹き飛んじまった!」

リーダスの優しい言葉に言葉を詰まらせる。それでも顔をあげない少女の頭を、誰かの腕がぐしゃぐしゃとかき回した。



「顔、あげてみろ。」

『………。』

言われた通りにすれば、目の前には微笑むラクサス。涙に濡れた表情で小首をかしげれば、彼はギルド全体が見えるように横へと避ける。


『…ラクサス?』

「今ここにいるやつはみんなリーダスと同じ考えだ。」

『……っ!』



マカオもワカバもラキもウォーレンもマックスもロメオも。ギルドに残っていたはずの彼らは、とても嬉しそうで笑顔が絶えていない。

「リーダスも言っただろ。辛かったはずの7年も、俺たちの経験したあの1日も…」

「こうやってみんなそろえばハッピーなんだよ!!」

『…ぅわ!?』


突然のラクサスの背から飛び出してきたハッピーに、驚きながらも何とか受け止める。
ハルの肩にはぴとっとアイスが掴まった。



「おまえはすぐそうやって深く考えすぎなんだ!」

『アイス…。』

「7年間、辛い思いさせちゃったけど、これからもっと楽しい思い出作ればいいよっ!」

『ハッピー…、そうだね!』

ラクサス、そしてアイスとハッピーに励まされふわりと笑顔をみせるハルに、ナツとグレイはほっとする。




しかし




「「(オレがその役、やりたかった…。)」」



と、心の中で呟くのだった。











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