▼ 01
791年。ハルたち、天狼島組みが消息をたってから7年が経過した。
一人の少年が海を見つめる。
「いつまで海を眺めてるんだい?」
「早く帰らないと父さんが心配するぞ。」
「ロメオ…。」
彼は未だ帰らぬハルたちを待つ。7年の間…。
マグノリアから離れた丘の中伏に佇む一つのギルド。それは7年前とは違い、ぼろぼろのフェアリーテイルだった。
「ロメオのやつまだ帰ってこねえ!アルとビスカのやつ、ロメオ放ったらかしてイチャイチャしてんじゃねえだろうな!!」
テーブルへジョッキを叩きつけ怒るのは、7年前より老いたように見えるマカオ。彼を宥めるワカバも同様。
「俺のことはマスターって呼べっつってんだろ!?」
「こんな貫禄のねえマスター、見たことねえよ!!何が4代目だ!」
ぎゃあぎゃあと言い争う二人。
7年前とは違い人の減ったギルド。リクエストボードには以前のように、埋め尽くされていた依頼書はない。
あれから全く変わってしまったフェアリーテイル。
もちろん7年もたてば、メンバーの容姿も各々変わっていた。
―――ガチャ
「おやおや、相変わらず昼間っからしんみりしてるねェ?これだから弱小ギルドはやだよなァ!」
ゲラゲラと笑う5人組の男。
「ティーボ!ここにはもう来んなって言っただろうが!!」
マカオの訴えにも、彼らは怯むことはない。
「おいおい、オレたちにそんな口聞いていいのか?マグノリアを代表するギルド、黄昏の鬼(トワイライトオウガ)によ?」
ぐっと拳を握るマカオに、ワカバや他の仲間が歩み寄る。
「かつてはフィオーレ最強だったかどうだか知らねえけどよ…、もうおめえらの時代は終わってんだよ。」
「…っ!」
借金の返済が遅れているという理由でここへやってきた彼らに、マカオは来月まとめて払うと約束し、何とかその場を抑えてもらった。
彼らはギルド内を荒らすだけ荒らし、帰っていったのだった。
静まるギルド内。誰もが怒りを抑え込んでいた。
嫌な雰囲気の中、風に仰がれたリーダスのスケッチブックから、何枚かの絵が辺りを覆う。
そこには笑顔の仲間、ハルをはじめ、ナツ、グレイ、エルザ…マカロフ。今はこの場にいない仲間の笑顔が描かれていた。
「あれからもう7年か…。」
「…そんなに経つのか。」
ぽつりと呟かれる事実。懐かしいと笑おうとするも、笑顔がうまく作れない。
「あれから何もかもが変わっちまった…っ!」
見つからない仲間たちを想い、涙ぐむメンバーたち。
「たたむ時が来たのかもな…。」
「そんな話やめて!」
ワカバの声にラキは立ち上がる。
ワカバが何も言わないマカオに声をかければ、彼はうつむいたままにこたえた。
「オレは…オレは、もう…心が折れそうだ…っ。」
「……。」
ワカバはタバコを吹かし、視線をずらしながら言う。
「おまえはよくやってるよ、…マスター。」
初めてマカオを"マスター"と呼ぶワカバ。震える拳を床につけながら、マカオは続ける。
「あれ以来…ロメオは一度も、……笑わねぇんだ…っ!」
顔を抑えるマカオの頬を濡らす涙。その訴えには誰も応えることが出来なかった。
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