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「まさか七眷属にブルーノートまでやられるとは…。ここは素直にマカロフの兵を褒めておこうか。……やれやれ、この私が兵隊の相手をすることになろうとはな。」
ハデスが船の上から島を見下ろす。そこから鋭く彼を睨みつけるのは、"マカロフの子"。
「悪魔と妖精の戯れも、これにて終劇…。どれどれあの小娘といい、もう少し遊んでやろうかな。
3代目フェアリーテイル!来るがよい、マカロフの子らよ…。」
ぐっと拳を握りしめるグレイは、背を向けるハデスに向かって叫ぶ。
「ハルはどこだ…っ!?」
「そうよ!あたしたちより先に、ここに来たはず…っ」
「ハル…というのか?あの小娘は。」
歩みを止めるハデスはふっと笑みを浮かべた。
「…自分たちの目で、確かめるといい。」
再び歩き出すハデス。ナツたちはぎっと歯を食いしばる。
「…ちっ……!!」
舌打ちをしながらもグレイは、ハデスのいる場所へと一直線に氷の階段を作り出す。
「あいつはマスターをも凌駕する魔導士…。開戦と同時に全力を出すんだ!!」
「…ハルさん…っ」
「ハルーーーっっ!!」
船に足がついたと同時に、ハデスへと攻撃をしかけるナツ。しかし相手は辺りを襲う炎を片手で容易に制する。
「…ふん」
両サイドから襲いくるグレイとエルザにも、ハデスはもろともしない。
続くルーシィによるタウロスの攻撃に加え、ウェンディによる素早さ、攻撃力、防御力の強化。
「ちょこまかと…」
魔法の鎖に捕まったエルザはそのままグレイに突っ込む。
ハデスの頭上へ飛び出したナツが両腕にまとった炎で仕掛けるも、すぐに態勢を整えたハデスによって吹き飛ばされてしまう。
「ナツ!!」
「おう!」
氷のハンマーを足場にナツを打つグレイ。勢いよく飛び出したナツに向かって、ウェンディの咆哮とスコーピオンの攻撃が、ユニゾンレイドとなって、さらに勢いを与える。
「火竜の劍角!!」
「……っ…」
その勢いのままナツはハデスの腹部へと突っ込んだ。初めて吹き飛ぶハデスに、手応えを感じるナツたち。
しかし
「人は己の過ちを経験などと語る。」
爆煙が辺りを覆う中、ナツたちの元へ平然と歩んでくる人影。ルーシィは驚きを隠しきれずに、目を見開いた。
「しかし本当の過ちには経験など残らぬ…。私と相対するという過ちを犯した汝等に未来など、ないのだから…のう。」
無傷のままにその場に立つハデスに、圧倒的なちからの差を見せつけられる。
「で、でも…見てください!左腕が…っ」
ウェンディの声に彼の左腕へと視線を移せば、何故か凍りつきまともに動かすことが出来てはいない様子。
「なんで…」
「先ほど汝等も言っておったであろう…。ハル、という小娘のことを。」
「やっぱりハルと戦ったのか!?」
「……っ!!」
ここに着いて初めて辺りを注意深く見回した。冷えきった部屋のあちこちが凍っている。
「ハルはどこだ…っ!!」
エルザの訴えにもハデスは答えない。
「汝等とは違い、あの小娘はなかなか楽しませてもらった…。」
「……っ!!?」
わずかに彼女の臭いを嗅ぎ取ったナツが勢いよく振り返った。辺りは氷の結晶で覆われており、人影の確認など容易ではない。
「ハル!!!」
「ちょ…ナツ!?」
突然走り出したナツに驚くルーシィ。彼の行き先に気づいたルーシィたちは大きく目を見開いた。
「おい…っ!ハル!!しっかりしろっ!!」
「ハル!?」
「何故、ハルが凍っているんだ!?」
一斉に駆け寄るエルザたち。ハデスは声をあげて笑う。
「その小娘はよくやった。私の左腕を潰したのだからな…。自分の命と引き換えに…!」
「……っ!!?」
ハデスの言葉にピクリと反応をみせる。
「しかし私には勝てぬ!汝等もだ!ここで皆、朽ち果てるのだ!!」
「ハルが簡単に命懸けるわけねぇだろぉお!!!」
グレイの叫び声にナツの腕の中にいた身体が、わずかに身じろいだ。
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