01










『どこにあるんだろ…。メイビスのお墓。』


きょろきょろと辺りを見回しながら天狼島を歩き回るハルとアイス。先ほどからルーシィの叫び声らしきものが聞こえるが、試験中のため助けになど行かない。

背後からの影に歩みを止める。自分を覆うほどの巨大な影に、ハルは『またか…』とため息を落とした。





何匹目かになるモンスターを薙ぎ払い、再び前へと進み始めた。

「闇雲に探しても見つかんねぇんじゃね?」

『そーだねぇ…、じっちゃんがそんな甘い試験内容にするはずも……?』



―――パァアン


響き渡る閃光弾。紅く光る空を見上げてハルは首をかしげる。

『……何だっけ、あれ。』

「敵が…これから攻めてくるんだ…!」


茫然とするアイスの言葉にハルは大きく目を見開いた。

『ここ天狼島だよ!?なんで……っ…?』







「また…誰かいるのか。ごめんね、すぐに出て行くから…。」


木々の間から出てきたひとつの人影。ハルは栗色の瞳を細め、影の正体を確認する。

うつむきがちな相手は黒髪の青年で、こちらに敵意はないようだった。



『…どちらさまぁ?あんたが侵入者?』

「ここなら…誰もいないと、思ってたんだ。」

『はぁ?ここフェアリーテイルの聖地だよ!よそ者が勝手に入っていい場所なんかじゃ……えっ?』


交わる視線。彼の紅い瞳からはぽろぽろと流れ出る涙。わけのわからない状況に、ハルもアイスも目をまるくする。



『な、何も泣かなくても…』

「うろたえすぎ…。」

突然の涙にわたわたと慌てる少女。アイスは呆れたように呟いた。


「ナツに続いて…君にまで会えるなんて……ハルっ」

『…あたしの名前を、知ってる?』

「誰だ、こいつ…。」

謎の青年にハルは眉をしかめる。あっという間に警戒心を解いてしまった彼女は、ため息をつきながら彼に向かって手を払った。



『誰だか知んないけど、さっさと出ていきなよぉ?早くしないと他のみんなにも見つかっちゃって、怒られちゃうからねっ!』

「ハル、いいのかよ!?」

『いーの、いーの!』

青年をおいてふらふらと行ってしまうハル。驚きを隠せないアイスを連れて歩き始める。


『敵意がまったく感じないし…。いきなり泣かれたら…ね。』

「…甘い。」

『……でも大丈夫だよ、きっと。』

確信のない彼女の言葉にぎゃあぎゃあ反発するアイスだが、ハルに促される通り素直について行くあたり、信用はしている様子。




「ハル…、君は相変わらずだね。」

そう呟くように吐かれた言葉は、誰に届くわけでもなく、その場で消え去ったのだった。










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