01
アクアラグナが去り、復興へと動き出すW7。麦わらの一味はカンパニーのプレハブ小屋にて休息をとっていた。
ルフィが目を覚ますまで各々が好きなように時間を過ごすことになり、ハルは荷物が全て流され気落ちしたナミに一声かけ、そのプレハブを後にする。
記者やら人混みでいっぱいの正門。
それを悠々と飛び越えて下町へ降りる。もちろん、まさかこの正門を飛び越えるなど思っていない記者たちには気づかれることはない。
『………。』
水門エレベーターの上。ごろんと寝転がるハル。やはり手には動くことのないゴーレム。
『……メリー。』
ぽつりと溢れる名前。ゴーレムをぎゅっと握りしめると上半身を起こした。
『けど…。』
思い返すのは彼女のこと。漸く名前を呼んでくれた仲間に、小さく笑みを漏らす。
『…よかった。』
再度ゴーレムを見つめるとふふっと微笑むハルは、とても嬉しそうに見える。実際に今さらながら、とても嬉しいと感じているのだろう。
そこへ、何やら下が騒がしくなっている。
ゴーレムをしまい、何事かと確認すると、そこに見えるのは幾人もの海軍。行き先は間違いなく、今自分たちが匿われているプレハブだろう。
『…どーしよう。ここで潰しとくべきかな。ルフィも起きてないだろうし…。けど勝手な行動したら、またナミに怒られる。』
あれやこれやと考え、行き着いた答えは…。
『とりあえずプレハブに帰ろう。』
水門より飛び降りると、軽快に屋根の上を走っていく。時に声がかかるが、ちらっと目をやるだけで、特に興味は持たない。
もともと人見知りでもあるハルにとって、他人の声はあまり好ましいものではないから。
『…、……?』
そんな声の中、聞き慣れた声がして足を止める。決して交わることがないだろうと思われた声たち。
幼い子どもたちの声と、仲間であるゾロの声。
『…ゾロと、……子ども?』
きょとんと目をまるくするハルは、とんっと屋根より降り立ち、目の前の状況を理解しようと努める。
『あ、迷子…?』
「ハル!おまえどっから…。」
どうやら子どもたちにプレハブまでの道を尋ねていた様子。子どもたちは何やら怯えたようにゾロの相手をしている。
『そんなことより、海軍来てた。』
「そうだ!!」
けろりと言ってみせるハルに、はっとすると少女を置いて走り出した。その背中を追いかける子どもが、「そっちじゃないです!」と叫んでいる。
目の前を行き来するゾロを目で追っていると、「おまえも早く来い!」と呼ばれた。
「おまえも賞金首だ。それでもない攫われたばっかだろうが!ちょっとは危機感持て!」
『……もう捕まらない。』
ゾロの言葉にあからさまにむすっとするハル。「どうだかな。」と笑うゾロだったが、その横をあっという間に通り抜ける影に身体を仰け反る。
目の前で跳躍する小さな身体は、軽々と屋根の上へ上る。
『さっさと行って蹴散らしとく。』
「はっ!?」
よっぽど気に食わなかったのだろう。ぷいっとそっぽを向くと、ゾロの言葉に耳を傾けることなく最短距離でプレハブへと向かった。
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