01
『ぷはっ!!』
海から顔を出したハルは、目の前にいる仲間…一隻の船を見上げる。縄梯子を登る仲間たちを眺めながら、メリー全体も見渡した。
不思議なのは、誰がここまでメリーを連れて来てくれたのかということ。
「おい、チビ!早く麦わらを投げ入れろ!」
『…あ。』
フランキーの言葉に我に返ると、抱いていたルフィは戦闘と海によって、へろへろになっている。慌てて甲板へ投げ入れると、自身ものそのそと縄梯子を登った。
甲板では泣いて喜ぶチョッパーとウソップ。ルフィも大の字に寝転がり、にししと豪快に笑っている。
とんっと甲板に足を降ろすと、近くに座り込むロビンに気づいた。ハルが優しく微笑みながら肩を叩けば、ロビンも笑みを浮かべて立ち上がる。
「ルフィ、みんな……本当にありがとう!」
その言葉に笑顔だけで返す仲間たち。ハルもまた眉を下げて笑う。
『心配かけてごめんなさい、助けに来てくれてありがとう!!』
ててっとマストへ抱き着くと、『メリーもありがとー!』と言いながらへらっと笑った。そんな少女の姿にほっとする一同。
そんな空気を引き締めるのはやっぱり…
「そんなこたァどーでもいい!今はこの状況をどうするか考えろ!」
ゾロの一声に「そんなこととはなんだ!?」と怒るチョッパーやサンジ、相変わらずの様子に微笑むロビン。そんな彼女を見て、ハルは安心したように目を閉じる。
―――ドサッ
「「「「っ!!!?」」」」
突然のことに対処しかねる一同。先ほどまで平然としていたハルが、その場に倒れこんだのだ。慌ててサンジが駆け寄るも、返事はない。
「チョッパー!!」
「お、おう!!」
ハルのことも気になるが、この状況をどう突破するかも考えなければならない。ナミは拳を握りしめ海や風の動きを読む。今しなければならないことはなんなのか。
「ハルのことはチョッパーに任せて!他のみんなは軍艦からの砲撃を防いで!!」
「…わかった。」
悔しげに呟くサンジは少女を気にしながらも甲板へ上がる。ゾロもまたじっとその治療を見るも、何を言うこともなく後を追った。
「ハル…っ。」
チョッパーは瞳に涙を浮かべながら治療をする。
その様子にただならぬことなのではないかと動揺するナミ。持ち前の航海術で巧みに勝利への進路を見つけると、それをココロへ指示し、慌てて二人の元へ駆け寄った。
「ちょっと!?大丈夫なの?」
「…傷はもう塞がってる、酷い傷をつけられてたみたいだけど。…っ、けど今のハルは酷い貧血状態だ!早く輸血しないと…!!」
「なら早く…っ」
「違うんだっ!!」
チョッパーの言葉に眉をしかめるナミ。何が違うのかとでも言うような表情だ。
ココロが舵を取り、ナミの指示通りに船が進む。大きく揺れるメリー号。
「何が違うのよ…。」
「…ハルの血液は、この世界のものじゃ補えない。」
「おめぇらァ!!船体にしっかり掴まってろ!!」
フランキーの声にはっとするナミ。ハルを抱えてマストへしがみつく。チョッパーも二人を守るよう、同様に抱きしめた。
一瞬の衝撃ののち、メリー号の船体は海を離れ、青い空へと舞い上がる。それはまるで空を飛ぶ様な心地。ウソップの煙幕により、海軍は本格的にメリー号を見失う。
これだけの軍事力、CP9まで揃っていたエニエス・ロビーより、麦わらの一味は攫われた仲間を含む全員で脱出。これが歴史的な一戦となることは、言わずもがな。そして、政府がこのまま彼らを野放しにするはずもないのだった。
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