02
「ハルちゃんは!?」
メリー号が海上へ無事着水すると、慌てて駆け寄るサンジ。遅れてゾロに引きづられる形でルフィも、他の仲間たちも集まった。
黙ったまま俯向くナミに、ロビンは「どうかしたの?」と尋ねる。
「血が…」
「血ならおれのをあげるさ!!ダメだったらルフィでもウソップでも、ゾロだっていい!!」
「…だめなんだ。ハルの血は特殊なもので、それをおれたちの血液で補うことはできないんだ。ドクトリーヌが言ってた。」
何を言われているのかわからない。
みんなそんな表情でチョッパーを見る。血が特殊?だって彼女は自分たちと同じ…
「生まれた世界が…違うから?」
ロビンの一言に辺りはしんと静まり返る。事情を知らないフランキーは「どーゆうことだよ!」と声を荒げた。
忘れてしまっていた。あまりに彼女が馴染んでいたから。あまりに彼女が寂しさを見せないから。
「おい、チョッパー!ならハルはどーなるんだよっ!!?」
ルフィの怒号に帽子をきゅっとかぶりうつむく。
「おれにでぎるごどはない"っ。けど…っ!!」
ぽたぽたと落ちる滴。それが何なのかなんて、誰もが分かっている。
「ドクトリーヌがハルの血液の研究をしてたんだ。その時分かったことで…、ハルの血は生きてるんだ。」
"血が生きている"
それだけ聞くと、当たり前だろうと思う言葉。しかし、仲間たちはみんな心当たりがあった。
「…あの紅い光。」
「そうなんだ。ハルはそれを"寄生型"と呼んだ。"イノセンス"が体内に寄生してるんだって…。おれにはわからないけど、もしかしたら…ハルなら…、大丈夫かもしれない。」
悔しげなチョッパーの頭をぽんと撫でるのはゾロだ。そんな二人を見ながら、ロビンはそっと少女へ視線を移す。
あの時、あれだけ切り刻まれていた彼女の身体は、あっという間に止血され、さらには動けるまでに回復していた。確かにあの時の出血量は大したものだった。
彼女は今の今まで平然と動いていた。もちろんそれがやせ我慢ではないとは言えない。しかし、ロビンにはそれが"イノセンス"の力としか思えなかった。
「私たちは、ハルのことを知らなすぎるわ…。」
「…いざという時、救えないんじゃ意味がねえ。」
サンジはタバコを噛み締めながら、ぐっとその場で俯向く。同様に目をそらす仲間たち。ただひとり、ルフィだけは隣に横たわるハルを見つめる。
「…血がねえ割に元気そうじゃねえか?」
ルフィの一言に「この状態のどこが元気なんだよっ!?」声を荒げるサンジを横目に、チョッパーはハルを覗き込む。
「…か、顔色が戻ってる…?」
先ほどまで貧血により真っ青だった顔色。10分も経ってはいないにもかかわらず、ハルの顔色は普段と遜色ないほど、良好なものになっていた。
「……これが"イノセンス"の力なのよ。」
ロビンの声にみんなは息を飲む。
「筋力増強、自然治癒力の向上…。私たちには到底理解できない力。きっと異常速度の造血だって可能になる。」
「ならその"イノセンス"とやらで、今ハルの体内では血が作られてるってことか…?」
ウソップの問いにチョッパーがこくりと頷いた。
「ちょっとまってよ!ならハルは…、助かるの?」
眉を下げ不安を消せないナミの言葉に、ぽろぽろと涙をこぼすチョッパーは再度頷く。
「
んっ!だいじょーぶだっ!!」
思わず胸をなでおろす一同。ナミやウソップは安心から流れる涙が止まらない。さすがのゾロも額を押さえて、ほっと息を吐いていた。
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