01
何も言わずに歩いていくロビン。声をかけるフランキーを無視したまま、一号車へと入って行く。
「おいっ、ちょっと待てよ!待てってば!!」
後を追うフランキーを見送り、カリファが尋ねた。
「大丈夫かしら。あの二人を一緒にして。」
「到着まであとわずか。今さら何が起こるというのだ。…もう逃がしはしないさ。」
『……っ…。』
ハルを抱く腕に力を込めるハットの男。
「やがて死にゆく罪人同士…精々その運命を嘆き合うことだ。」
『ねえ…。』
ハットの男、ルッチの隣に座らされるハルが口を開く。ゆっくりと少女を見下ろす彼に、視線を向けた。
『なんであたしを連れて行くんだ。同じ海賊って言うだけなら、サンジくんだってそうだろ。』
「…あいつは賞金首ではない。」
『ルフィやゾロは…捕まえれなかったってことか。』
挑発的な聞き方に、他三人の視線がぎろっと少女を捉える。
「…舞姫。おまえは世界政府の科学班へ渡される。」
『科学…班。』
聞き覚えのあるそれに空色の瞳は見開かれた。
「おまえの能力は、自然系(ロギア)にも通用すると報告されている。それを聞いた科学班のトップが、おまえに多大な興味を示している。」
『……何それ。解剖でもしようっての…。』
「それは向こうの人間が決めることだ。」
眈々と話すルッチに、ハルは小さく舌打ちをする。辺りを見回しても他の三人に囲まれ逃げ場なんてない。
とにかくロビンに逃げる気がないことには、彼らから逃走を図ることは難しい。
『……ロビンとした、約束って何。』
「知らんのか?他の仲間は皆知っているようじゃが。」
『…っ、あんたらに捕まったから聞けなかったんだろ。』
長っ鼻、カクの言い方にイラっと眉をしかめると、彼は面白そうに告げた。
「わしらがニコ・ロビンに突きつけた条件は二つじゃ。ひとつは麦わらの一味に暗殺犯の濡れ衣を着せること。もうひとつは、その後政府に身を預け従うこと。」
『ロビンがそんな条件素直に聞くはず…』
「バスターコール…。」
ルッチの言葉に振り向けば、彼はニヤリと妖しく笑いながら言った。
「おれたちCP9は麦わらの一味に対し、一度だけバスターコールの発動を許可されている。」
『…バスターコールって?』
「軍艦10隻と中将5人を一カ所に緊急招集する緊急命令よ。」
カリファの説明にも想像がつかないハルにとっては、何の恐怖もない。
『でも、だからって…ロビンがあたしたち裏切ってまで…。』
「裏切ることがおまえらを救う結果になったとしてもか?」
『……どーゆうこと?』
カクは帽子を深くかぶりながら告げる。
「その条件に対するニコ・ロビンの願いが"自分を除く麦わらの一味7人が無事にW7を出航すること"じゃ。」
「生憎、貴女は上からの命令があったため、除外されてしまいましたけど。」
『……あたしたちの、ため。』
ロビンの"約束"の意味を知ったハルはすとんと肩の力を抜いた。
『……ロビンはやっぱり、…っ。』
ほっとしたのかそのまま意識を失ってしまうハル。
「まだこの子は知らないのね。ニコ・ロビンが世界を脅かす兵器を呼びおこせる力を持っていることに…。」
カリファの言葉は少女の耳に届くことなく消えた。
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